研究課題
前年度までの研究で、癌細胞の幹細胞性はiPS細胞から誘導したモデル細胞(miPS-LLCcm)だけなく、広く鉄代謝に依存的である事が明らかとなった。この知見を新たな癌幹細胞治療法に応用するために、鉄キレート剤と既存の癌幹細胞治療薬との比較を行った。これまでに臨床研究まで行われている癌幹細胞治療薬として、Stat3のリン酸化を抑制するBBI608(Napabucasin)があるため、鉄キレート剤(DFX、SP10)との幹細胞性マーカーの阻害活性の違いについてヒト食道癌細胞株(TE8、OE33)を用いて検討を行った。BBI608はヒト食道癌細胞株(TE8、OE33)に対して、増殖抑制効果とSTAR3のリン酸化阻害活性は確認されたが、幹細胞性マーカーのNanog、c-Myc、Klf4、Oct4の発現阻害効果は認められなかった。鉄キレート剤(DFX、SP10)はいずれのマーカーの発現も抑制するため、BBI608と比較すると幹細胞性阻害効果は強い事が示された。また、TE8を用いてヌードマウスに皮下腫瘍マウスモデルを作成し、SP10(200mg/kg、5日/週)を腹腔内投与し、増殖抑制効果、幹細胞性抑制効果について確認を行った。最終年度に当たるために、これまでの検討結果をまとめ、幹細胞性マーカーNanogの発現が食道癌の予後および治療抵抗性に関わり、鉄キレート剤がその幹細胞性を抑制し、さらにその効果は既存の癌幹細胞治療薬と比較しても高い可能性がある事を、International Journal of Cancer誌に投稿し、論文として発信を行った。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
International Journal of Cancer
巻: - ページ: -
10.1002/ijc.33544