研究課題
①肺気腫モデルイヌの作成:イヌの左下葉底区気管支を、気管支鏡のチェンネル孔を介して挿入したバルーン付きカテーテルで閉塞した後、5mlの蒸留水に希釈したブタ膵臓由来エラスターゼ300IU/Kgをカテーテルより注入、5分間気管支を閉塞する。4週間後には左肺底区を中心とした肺気腫が完成する。2頭で予備実験を行い、目的の部位に肺気腫が完成していることを組織学的に確認した。上記の方法で7頭の肺気腫犬を作成した。②FGF徐放ゼラチンシートの作成:酸性ゼラチンに蒸留水を加え、室温で30分膨潤させる。40℃で30分撹拌して溶解させ、5%ゼラチン水溶液を作成する。20mlずつとりわけ、それぞれに40ulのグルタルアルデヒドを加える。バランスディッシュ(80mm×80mm)に20mlずつ流延し、室温で約30分静置してゲル化させる。12時間以上4℃で冷却したあと、20mm×80mmに切り分けて0.1Mグリシン水溶液500ml中に移し、1時間静かに撹拌する。グリシン水溶液を蒸留水に置換し、室温で1時間ずつ2回撹拌したあと-80℃で凍結乾燥させてゼラチンシートが完成する。EOSガス滅菌したゼラチンシートに、2ug/uLのbasic FGF溶液を室温で3時間浸漬させ、bFGF徐放ゼラチンシートを作成した。③PGAシートの貼付:全身麻酔下に右下側臥位とし、左腋窩に10㎝の小開胸を行う。肺底区に肉眼的に肺気腫が完成していることを確認し、同部にゼラチンシートを貼付する(数か所縫着)。胸壁との癒着を避けるため、ヒアルロン酸ナトリウムとカルボキシメチルセルロースを成分とした生体吸収性バリアを貼付する。現在のところFGF群を3頭、コントロール群を2頭行った。シート貼付1カ月後に左下葉を摘出して組織学的検討を行い、単位面積あたりの肺血管数ないし肺胞間距離を計算する予定である。