研究課題/領域番号 |
18K08545
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中島 義基 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30593082)
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研究分担者 |
野口 洋文 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50378733)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 外科系臨床医学 / 外科学一般 / 小児外科学 / 移植外科学 |
研究実績の概要 |
本研究では膵β細胞の分化誘導に最適な足場材料としてEpCAM(Epithelial Cellular Adhesion Molecule)[カルシウム非依存性細胞接着誘導因子]タンパク質に着目した。EpCAMはDelta-like 1 homolog (DLK1)と共に肝芽細胞マーカー分子として知られる。分担研究者である講座長の野口洋文教授の指示監督の下で作製したヒト肝細胞由来iPS細胞、または、肝芽細胞の前駆細胞である前腸(foregut)を人工的に作製し(induced tissue-specific stem(iTS)-liver(L)細胞)、肝細胞への分化誘導を行う課程で(論文投稿準備中)、細胞膜へEpCAMを発現する人工ヒト肝芽細胞を得た。そのため、本研究では膵β細胞の分化誘導に最適な足場材料として人工ヒト肝芽細胞をフィーダー細胞として用いることとした。また、膵β細胞の分化誘導に最適な足場材料としてヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(Human Mesenchymal Stem Cells from Adipose Tissue: hMSC-AT)も候補に上がる。hMSC-ATの培養には胎児牛血清(FBS)を含有する研究用培地、およびFBSを含まない臨床用培地が存在する。LC-MS/MSタンパク質質量分析を行い臨床用培地で培養したhMSC-ATと研究用培地で培養したhMSC-AT の細胞抽出液に含まれるタンパク質組成を解析した(論文報告:Int. J. Mol. Sci. 2018, 19, 2042; doi:10.3390/ijms19072042)。その結果、臨床用培地・研究用培地で培養されたhMSC-ATが発現するタンパク質成分は極めて類似しており、膵β細胞の分化誘導に最適な足場材料としてhMSC-ATを用いる場合には臨床用培地・研究用培地の差は無いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
STO細胞を用いてヒトEpCAM遺伝子を導入した細胞株の樹立を検討した。しかし、遺伝子導入装置を用いたベクター導入では、導入遺伝子がGFPであっても電気的ストレスにより細胞死が高頻度で生じやすいことが分かった。問題の解決を模索したが、細胞株の樹立に必要な費用が30年度の予算を超過することが想定されたため細胞株の樹立実験を中止した。そのため、我々はEpCAMを発現する代替のフィーダー細胞を準備する必要性から、膵臓と発生の起源が交差する肝細胞に着目し、細胞膜へEpCAMを発現する人工ヒト肝芽細胞を得た。31年度に、STO細胞を用いてヒトEpCAM遺伝子を導入した細胞株の代替として、EpCAMを細胞膜に発現する人工ヒト肝芽細胞をフィーダー細胞として用いてヒトiPS細胞由来膵β細胞を分化誘導する実験を開始する計画である。
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今後の研究の推進方策 |
ヒトiPS細胞由来膵β細胞を分化誘導するプロトコールとして当初の研究立案の通り、京都大学iPS研究所(CIRA)の長船教授らのグループのプロトコール(Toyada et. al. Stem Cell Reports. 9. 419. 2017)に記載された試薬の見積までをすでに完了している。 30年度の予算が不足したため、分化誘導の試薬は31年度に購入し実験を進める計画である。 EpCAMの膵分化誘導に対する機能を調べるために、30年度に作製したEpCAMを細胞膜に発現する人工ヒト肝芽細胞、また、生体内で膵β細胞の成熟化を促進する因子を探索するためにhMSC-ATをフィーダー細胞として用いて、ヒトiPS細胞由来膵β細胞を分化誘導してその分化成熟度を調べる計画である。膵β細胞分化成熟度はPDX1, PTF1A, NKX6.1陽性、およびインシュリン発現量を指標とする。測定は、リアルタイムPCR法を用いて評価する。また、グルコース負荷試験、インシュリン分泌量の測定を行う。また、同様の実験をhMSC-ATフィーダー細胞を用いても行う。リコンビナントヒトEpCAMタンパク質に同様の効果が有るか否かを調べ、培地に添加されたEpCAMタンパク質がヒトiPS細胞由来膵β細胞を分化誘導を促進するか否かを調べる計画である。
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