マウス神経芽腫モデルを用いて、小児進行神経芽腫に対する免疫チェックポイント阻害療法の可能性を確認し、その効果の免疫学的メカニズムの解析を目指した。 マウス皮下に神経芽腫細胞(neuro-2a)を接種し、腫瘍結節を生じさせた状態で、抗マウスPD-1/PD-L1抗体を経腹膜投与した際に、抗腫瘍効果が得られた。特に抗PD-1、PD-L1抗体を同時投与すると、それぞれの抗体を投与した場合よりより抗腫瘍効果が認められた。この抗腫瘍効果が認められた腫瘍組織から腫瘍に浸潤する免疫細胞を分離し、FACS解析した。腫瘍に浸潤するCD8陽性リンパ球は抗腫瘍効果が認められた組織により多く含まれていた。腫瘍増殖に働くとされるCD11bGr-1陽性細胞の浸潤には大きな差が確認されなかったが、特に抗腫瘍効果が得られた腫瘍組織には貪食細胞の一つであるCD11cMHC classII陽性の活性化された樹状細胞(dendritic cell: DC)が多く浸潤していた。さらに、in vitroの実験では、腫瘍細胞に抗PD-L1抗体を作用させて貪食細胞(Macrophage)と混合培養すると、より腫瘍細胞の貪食が促進されるADCP(Antibody dependent cell phagocytosis)の効果が確認された。これらの結果を総合的に判断し、神経芽腫に対する免疫チェックポイント阻害療法では抗体投与により抗腫瘍免疫反応を誘導する活性化された貪食細胞(特にDC)の浸潤が促進され、加えて抗PD-L1抗体によるADCPが促進されることでCD8陽性の細胞障害性リンパ球の腫瘍組織浸潤が誘導されて抗腫瘍効果が得られると考えられた。以上の結果をJournal of Surgical Researchに報告し、また日本小児外科学会、国際小児腫瘍学会に報告した。
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