研究課題/領域番号 |
18K08554
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
富山 英紀 大阪医科大学, 医学部, 講師 (20298433)
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研究分担者 |
谷口 高平 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70779686)
内山 和久 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80232867)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 腸管神経系 / 蠕動 / ゼブラフィッシュ / セロトニン |
研究実績の概要 |
透明のまま発生・分化し、消化管運動の観察が可能なゼブラフィッシュを用いて、腸管神経系におけるセロトニン神経の機能と腸管蠕動不全症の病態の解明を 行っている。 GAL4エンハンサートラップ法により作成されたゼブラフィッシュモデルgSAIGFF249Aを用いて研究を行っている。今回、本モデルを用いた免疫組織化学染色により、心臓のペースメーカーチャネルに発現しているhcn4遺伝子が、腸管神経系においてセロトニン神経で特異的に発現していることを確認した。また、トリプルトランスジェニックモデルgSAIGFF249A;UAS:GFP;HuC:mCherryから、腸管神経系の発生段階におけるセロトニン神経の分化を確認し、セロトニン神経は発生初期に有意に増加することを確認した。 また、機能解析に関しては、SONY SI8000セルモーションシステムによる蠕動解析システムを構築した。生きた個体での解析が可能な本システムに、収縮ベクトル別に解析することで、蠕動評価を行う新たなパラメーターを算出した。それによると、発生初期にみられる順蠕動および逆蠕動は、それぞれ異なる収縮ベクトルで形成されていることがわかり、輪走筋および縦走筋の特徴を反映していた。 選択的HCNチャネル阻害剤によるセロトニン神経活動を抑制した実験と、光遺伝学を用いたトランスジェニックモデルgSAIGFF249A;UAS:ChRWR-YFPによるセロトニン神経を選択的に興奮させた実験を、SONY SI8000を用いて蠕動解析し、セロトニン神経の役割を調べた。その結果、セロトニン神経による逆蠕動制御メカニズムを解明した。そして、逆蠕動の中でも特に輪走筋の動きを選択的に制御していることがわかった。こちらはサブプロジェクトとして論文をまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュの消化管運動におけるセロトニン神経の生理学的機能解析を行った。続いて、セロトニン神経が器官形成や腸管神経の発生および保護に関与するか検討する必要があり、器官形成における蠕動の役割を解析する。
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今後の研究の推進方策 |
発生初期に薬剤5,7-DHTによって、選択的にセロトニン神経の破壊を行うと、腸管神経系の発達が阻害され、蠕動が抑制されることが確認できた。また、選択的セロトニン再取り込み阻害薬であるSSRIによっても同様の変化が認められた。欧米のコホート研究で行われた妊婦のSSRI内服が、児のヒルシュプルング病の発生に影響するとの報告があり、今後ゼブラフィッシュが胎生期に難治性蠕動不全を誘発する薬剤スクリーニングモデルになり得るか検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでゼブラフィッシュモデルを用いて、器官形成期の蠕動におけるセロトニン神経の役割を解析した。そして薬理学的実験にて、セロトニン神経の分化異常が腸管神経系の発達異常をもたらすことも示唆された。そのため、CRISPER/Cas9法によりhcn4 KO modelを作製し、セロトニン神経および腸管神経系の発達と蠕動解析を計画しており、その費用に充てる予定である。
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