研究課題
今年度は、コンカナバリンA誘導性の肝炎モデルにおける黒酵母由来βグルカンの効果を検証すると共に、天然の抗炎症作用を持つハーブRabdosia rubescensの主要な生理活性成分であるオリドニンの心臓移植における移植臓器生着延長および免疫寛容誘導効果について検討を行った。C57BL/6マウスからC3Hマウスへのアロ心臓移植を行い、移植当日から7間オリドニンを投与した。移植片の生着を観察すると共に、骨髄由来樹状細胞の機能および同種混合リンパ球反応に対するオリドニンの効果を検討した。その結果、オリドニンの投与は移植臓器の生存を有意に延長させた。一部のマウスにおいて90日以上の生着を示した。病理学的解析は、オリドニン投与による、移植後7日目における移植臓器の浸潤CD8陽性T細胞およびマクロファージ数の減少を明らかにした。また遺伝子発現解析は、移植臓器におけるIL-1βとIFN-γのmRNA発現レベルの低下を明らかにした。in vitro解析の結果、オリドニンで処理された樹状細胞は、T細胞の増殖およびIFN-γ陽性CD4T細胞の分化を抑制する一方、制御性T細胞およびIL-10陽性CD4T細胞の増殖を促進した。また、オリドニンはLPSにて活性化した樹状細胞のIkBのリン酸化抑制によるNFkBの減弱、NOD、NLRP3、caspase-1、IL-1β、IL-18およびIFN-γの発現を抑制すると共にIL-10発現を増強した。これらの結果はオリドニンが、NFkB/NLRP3シグナル経路を阻害することによりIL-1β、IL-18等の炎症性サイトカインの産生およびTh1分化・増殖を抑制する一方で、制御性T細胞の分化・増殖を促すことにより、臓器移植における宿主と移植片における移植免疫のバランスの改善を促す新規の天然型免疫抑制物質としての開発シーズになる可能性を有することを示唆した。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 4件)
Heliyon
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