研究課題/領域番号 |
18K08559
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
高橋 正貴 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 細胞医療研究部, リサーチアソシエイト (10626766)
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研究分担者 |
守本 祐司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生理学, 教授 (10449069)
内田 広夫 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40275699)
藤野 明浩 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 臓器・運動器病態外科部, 診療部長 (50306726)
檜 顕成 名古屋大学, 医学系研究科, 特任教授 (90383257)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リンパ管腫 / リンパ動態 / 光線力学療法 |
研究実績の概要 |
本研究では、病変特異的な異常リンパ動態を利用して、病変にのみICGを取り込ませ、蛍光イメージングによる局在診断の有用性を検証する。さらに同部位に近赤外光を照射した際に発生する熱を利用して、リンパ管腫を選択的に治療する光温熱治療の有効性を実証する。 申請者らはすでに、In vitro実験の検証により、リンパ管腫リンパ管内皮細胞(以下HL-LEC)はICGを取り込み、取り込んだ細胞に近赤外光を照射すると、100%に近い細胞の細胞死を誘導することも確認している。その結果を踏まえてin vivoにおいて、申請者は既に確立した背部皮下リンパ管腫モデルマウスを用いて、ICGによる蛍光イメージングならびに光温熱治療の治療効果を確認した。背部皮下のリンパ管腫モデルマウスにICGを嚢胞内に打ち込み、近赤外光を照射したところ、病理組織学的に移植片のリンパ管内皮細胞を含む照射部位には凝固壊死が起きていることがわかった。動物モデルにおいて本治療法の現象として有効性が明らかであるため、対照群と比較して量的に有効性を示す必要性があった。 コントロール群を近赤外光照射のみ、対照群をICG投与+近赤外光照射に設定し、背部皮下の体表モデルマウスを用いて、嚢胞体積の変化率の比較を行った。その結果、コントロール群と比較してICG投与+近赤外光照射群において有意に腫瘍が縮小した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書通りに進捗しているが、COVID-19の影響で今後の進捗が遅れる可能性は十分にある。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、後半は臨床で遭遇する深部体腔内のリンパ管腫病変を想定し、筋肉内病変モデルや後腹膜腫瘍モデルなどのマウスを作製して、本診断・治療法の有効性を確認する。 皮下リンパ管腫モデルに対しては、ICG用いた光温熱治療によって腫瘍増殖を抑制することができた。リンパ管腫はリンパ液を内包する多房性の嚢胞性病変であるが、嚢胞腔が大きく液体成分の多い病変では、ICGの含有量が大きくなり光吸収が増えることで、深部にまで光が到達しない可能性がある。しかしこの場合、嚢胞内に針を穿刺して内部リンパ液を抜いてから光照射すればよい。リンパ液吸引処置によって、深部にまで光送達できるようになるからだ。ところが、臨床で遭遇する難治性のリンパ管腫の場合、嚢胞腔が小さく相対的に異常リンパ管内皮細胞が多い。この場合は針穿刺によるリンパ液吸引が困難となる。したがって、手術併用によりある程度の容量を切除したのち、残存部に照射していく方法が現実的な解決策と考えている。あるいは、リンパ液の吸引なしに光照射ファイバーを病変内に刺入して腫瘍内部を直接照射する方法が有効であるかもしれない。この場合は、刺入部位における照射中の腫瘍温度を正確にモニタリングが容易ではないが、刺入されたファイバーの先端位置と温度をモニタリングする部位との距離(D)と測定された温度(T)との関連性を見出し、実臨床につないでいく。 また臨床においては、リンパ管腫患者の切除術前にICGを嚢胞内へ局所投与してICGのマクロでの蛍光分布を確認すると同時に、凍結切片を確認してミクロでもICGの細胞分布を確認する。また、ICGを取り込んだ余剰切除検体にex vivoで近赤外光を照射して病理組織学的な反応を確認することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
納期遅れのため。試薬とプラスチック消耗品を購入予定である。
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