研究実績の概要 |
乳癌の中でもエストロゲンレセプター陰性、プロゲステロンレセプター陰性、HER2蛋白陰性のtriple negative乳癌(TNBC)は従来より生物学的悪性度が高いこと、早期再発、予後不良という特徴があり、その治療選択肢も化学療法のみと狭いことから、治療に難渋する例が多い。中でも化学療法感受性が低いsubgroupを把握し、特異的な分子標的の同定、新しい化学療法レジメンの模索が重要な課題である。実際の臨床の現場においても、急速な病気の進行を呈する非常に予後不良のTNBCだけでなく、術後補助化学療法なしでも再発せず、長期予後良好な症例も多く経験する。従って、TNBCの多様性について、その分子機序を解明し、予後 不良・良好の鑑別に役立つ因子を同定し、予後不良な群に関しては、今後の治療に結びつく標的分子を解明することは非常に重要である。乳癌臨床検体においてvimentinの蛋白発現を免疫組織化学染色にて評価したところ、TNBCにおいてvimentin発現が見られる症例は有意に予後不良であった。更に多変量解析の結果、TNBCにおいてvimentin発現は独立した予後不良因子であることを報告した(Yamashita N et al, J Cancer Res Clin Oncol. 2013)。対象とした乳癌臨床検体においてE-cadherin/vimentin発現パターンを免疫組織化学染色にて評価し、予後の解析を行ったところ、E-cadherin高発現かつvimentin陽性の症例群が最も予後不 良であった。更に共焦点顕微鏡でE-cadherin/vimentin発現の局在を解析したところ、一つの腫瘍細胞内にE-cadherin/vimentinが共局在することを明らかにし、報告した(Yamashita N et al, Clin Breast Cancer. 2018)。
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