研究課題
ネオアンチゲン(以下、ネオ抗原)は、がん細胞に特異的に生じる体細胞性遺伝子変異に由来するペプチドであり、正常細胞には認められないがん細胞特異的で、より高い免疫原性があると期待される。本研究では、(1)ネオ抗原の解析、(2) ネオ抗原と腫瘍免疫機構との関連、(3)将来的にネオ抗原ペプチドを用いた個別化がんワクチン療法開発を目指した。新鮮乳癌生検材料を用いたネオ抗原解析と腫瘍微小環境における免疫監視機構に関与する因子の解析を行った。当科および関連施設において、倫理委員会の承認と同意を得た乳癌患者32例の腫瘍サンプルを対象に、ネオ抗原プロファイルを作成した。さらに、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および腫瘍免疫関連分子による免疫微小環境との関連を解析した。次世代シークエンサーによる全エクソンDNA+RNAの解析結果では、遺伝子変異数はトリプルネガティブ乳癌(TNBC)で多い傾向であった。遺伝子変異数はTILとそのPD-L1発現率(免疫染色IHCによる)、T細胞活性化マーカー(GZMB)、予想されるネオ抗原候補数とは正の相関を示した。以上の結果より、ネオ抗原は乳癌微小環境における免疫標的であることが示唆された。したがって、ネオ抗原は癌細胞特異的であり、高反応性CTLを誘導することが期待された。続いて、癌性腹水から樹立したTNBC乳癌細胞株のネオ抗原解析とネオ抗原ペプチド刺激によるCTLの誘導を試みた。ネオ抗原予測解析より得られた変異ペプチドによるパルス樹状細胞に対する自己リンパ球のIFN-g産生は、ペプチド濃度依存性に反応が増幅した。また、ネオ抗原パルス樹状細胞で刺激したリンパ球による自己腫瘍に対する細胞障害性は増強した。乳癌におけるネオ抗原ワクチン療法の可能性が示唆され、その意義は大きい。
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