研究課題/領域番号 |
18K08579
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
遠山 竜也 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (30315882)
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研究分担者 |
遠藤 友美 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20566228)
近藤 直人 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (90529166)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 |
研究実績の概要 |
乳癌のなかで最も予後不良な、いわゆる「トリプルネガティブ(TN)乳癌」に対しては、有効な治療薬の開発が急務となっている。最近、糖代謝に関わる酵素「FBP1」が、乳癌の増殖に深く関与していることが報告された。私たちはこれまでに、乳癌組織において FBP1発現が低下すると予後不良であることを初めて見出した。乳癌細胞は、FBP1の発現を調整することで、TCA回路や嫌気性解糖系を通して自らに有利な環境を作っている。これらの知見を踏まえ、FBP1発現低下によって作られる乳癌細胞の環境の変化が、化学療法抵抗性に関与している可能性に着目した。本研究では、糖代謝に関わる分子であるFBP1を標的として、TN乳癌に対する化学療法抵抗性の克服を目指した新規治療薬の開発を目的とする。TN乳癌は、FBP1発現を抑制することで、①「TCA回路」を抑制する一方、②「嫌気性解糖系」を亢進させて、自らの増殖に有利な環境を作り出していると考えられている。私たちは、当施設の乳癌症例を用いて、FBP1遺伝子発現と予後との検討を行った。 その結果、全症例を対象とした解析では、FBP1低発現の患者は予後不良であり、乳癌における独立した予後不良因子であることがわかった。TN乳癌のみを対象とした解析においても、FBP1低発現の患者は予後不良であることが示された。その理由として、FBP1低発現の患者では、術後化学療法の効果が劣っている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
乳癌組織におけるFBP1遺伝子のmRNA・蛋白発現状況の解析について、validation用の乳癌症例セットを使用して行うとともに、乳癌組織における上皮間葉転換関連遺伝子のmRNA・蛋白発現と予後との関連性について検討した。しかし、乳癌細胞株に対するFBP1遺伝子強制発現およびFBP1遺伝子ノックダウンの影響に関する検討が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
乳癌細胞株に対するFBP1遺伝子強制発現およびFBP1遺伝子ノックダウンによる影響を、1.FBP1の下流遺伝子発現およびEMT関連遺伝子、 細胞遊走能・浸潤能、化学療法の効果、の3つの面より進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は少額であり、使用計画に大きな変更はない。
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