私たちはこれまでの実験で、TaqMan RT-PCR システムを用いて長期予後を追跡でき、かつ、臨床病理学的データが揃っている乳癌症例を対象に、FBP1遺伝子の mRNA発現および免疫組織学的方法によるタンパク発現と、臨床病理学的因子および乳癌治療後の予後との検討を行った。まず、FBP1遺伝子の mRNA発現と免疫組織学的方法によるタンパク発現の間には正の相関を認めた。FBP1遺伝子mRNA発現解析において、全症例を対象とした検討では、FBP1低発現の症例は予後不良の傾向を示したものの有意差は認めないという結果であった。しかし、腋窩リンパ節転移陽性に限れば、FBP1低発現の症例は有意に予後不良であった。一方で、腋窩リンパ節転移陰性症例では有意差は認めなかった。また、免疫組織学的方法によるタンパク発現解析では、全症例および腋窩リンパ節転移陽性ともに、FBP1低発現の症例は有意に予後不良であった。
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