腹部へのラット異所性心移植モデルの成功率は様々な工夫をし少しずつ改善が見られてきたため、一酸化炭素付加人工ガス運搬体を加えた心臓保護液を用いた移植を行った。具体的には心筋保護液としてミオテクター 1.0ml のみ を投与した ものをコントロール群とし、ミオテク ター 0.9ml に 一酸化炭素付加人工ガス運搬体溶液( 1 0g/dL) 0.1mlの組成で投与した群を投与群とした。両者とも移植心を再灌流開始24時間後にレシピエントから取り出し、4%PFAで固定したのちにHE染色及びアザン染色を行い組織学的に解析し比較した。採取した移植心は肉眼的にはコントロール群と投与群の間に明らかな相違は認めなかった。アザン染色標本にて、収縮帯壊死はコントロール群で強く認めたものの、投与群においては明らかな変化は認めず、また投与群の方がより横紋構造が保たれているように見受けられた。両群において繊維芽細胞の増殖・線維化及び明らかな炎症細胞浸潤は認めなかった。 以上のように観察範囲において一酸化炭素付加人工ガス運搬体の有効性を示唆する所見が得られたものの、移植が無事成功し対象に含まれた数が少なく、統計学的に評価するところまでは至らなかった。
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