研究課題/領域番号 |
18K08582
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
稲葉 佑 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 特任助教 (70815589)
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研究分担者 |
志水 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (50226247)
伊藤 努 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 准教授 (00232455)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脱細胞化組織工学 / 心臓 / 僧帽弁 / 心筋細胞 |
研究実績の概要 |
脱細胞化心臓グラフトの作成と再細胞化の研究推進にあたり、in vivoでの自己細胞による再細胞化の確認を行った。心臓脱細胞化組織を作成し、①心筋組織欠損モデルおよび②僧帽弁モデルに対する、脱細胞化グラフトの移植、in vivoでの再細胞化の確認を行った。 ①心筋前壁表面を1cmほど切除、予め作成した脱細胞心筋組織を貼り付け、組織欠損部を補填、1ヶ月の生存後、組織学的評価を行った。HE染色で脱細胞化グラフト内に炎症細胞、繊維芽細胞、血管内皮細胞の浸潤を認めた。免疫染色にて脱細胞グラフト内に、血管内皮細胞の再細胞化、心筋細胞の遊走と生着を認めた。単純切除群(グラフトを補填しないコントロール群)と比較し、有意に血管内皮細胞の再細胞化を認めた。以上より脱細胞化グラフトは心筋細胞の再細胞化、生着に有利な環境であることがin vivoの実験で確認された。 ②脱細胞化僧帽弁を作成し、移植実験を行なった。移植後、僧帽弁は僧帽弁複合体の形態と弁機能を果たし、1ヶ月後の組織学的評価で僧帽弁尖に内皮細胞、弁間質細胞を示唆する細胞による再細胞化を認めた。脱細胞乳頭筋グラフトはレシピエントと十分に接着し、脱細胞グラフト内に血管内皮細胞の再細胞化を認め、グラフトが生体親和性が高く、移植グラフトとして有用である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脱細胞化組織は、プロトコールを作成することで、安定して作成可能となった。脱細胞化組織が心筋細胞にとって、生着しやすい環境でありグラフトとして有用であることがin vivoの実験にて確認できた。一方、新生児心筋のisolationの作成過程において、細胞生存率の低さを認め、脱細胞グラフト内での培養において、細胞の感染などいくつかの課題を認めた。in vitroにおける心筋細胞の培養、生着の実験条件の確立を進め、引き続き研究継続予定である。
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今後の研究の推進方策 |
脱細胞化グラフトへのin vitroでの心筋細胞導入に向けて、新生児心筋細胞のisolation技術の安定化を図る。脱細胞グラフト内での細胞培養のおける感染の予防のため、滅菌方法の検討を加える。同時に脱細胞化グラフトの生体親和性、移植グラフトとしての有用性確認のため、脱細胞化血管グラフトの移植実験およびin vivoでの再細胞化の確認も合わせて行う。
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