研究課題/領域番号 |
18K08583
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
武井 寛幸 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (40261846)
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研究分担者 |
坂谷 貴司 日本医科大学, 医学部, 教授 (50431903)
瀧澤 俊広 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (90271220)
栗田 智子 日本医科大学, 医学部, 講師 (70619204)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 乳癌 / 術前内分泌療法 / 血管新生 / Ki67標識率 / リンパ管侵襲 / 静脈侵襲 |
研究実績の概要 |
後ろ向き研究として、術前内分泌療法(NET)が施行され、さらにNET前の針生検検体とNET後の手術検体ともに評価可能であった16症例(2014年~2019年、日本医科大学病院乳腺科で手術)を対象とした。 治療開始時年齢は45-81歳(中央値61歳)、臨床的腫瘍径はT1が9例、T2が6例、Tisが1例、臨床的リンパ節転移は全例陰性であった。NETの内容はアロマターゼ阻害薬が7例、タモキシフェンが6例、タモキシフェン+LHRHアナログが3例であった。治療期間は34-436日(中央値188日)であった。臨床的治療効果は縮小が5例、増大が2例、不変が9例であった。手術術式は乳房全切除術が5例、乳腺部分切除術が11例であった。病理学的リンパ節転移は4例に認められた。日本乳癌学会が提案する組織学的治療効果判定に基づき、NET前後の病理組織検体を比較検討したところ、Grade 1aが11例、Grade 1bが2例、Grade 2aが3例であった。NET後のKi-67標識率は5%以下が9例、6-15%が4例、16%以上が3例であった。 前年度の研究結果から、NET後のKi-67標識率は臨床的腫瘍縮小の有無、治療後リンパ節転移、治療後リンパ管侵襲と有意な関連性を示した。今回の検討では、NET後Ki-67標識率は、治療前腫瘍径(P<0.05)、治療後リンパ管侵襲の有無(P<0.05)、治療後静脈侵襲の有無(P<0.05)と有意な関連性を示した。NET後のKi-67標識率と組織学的治療効果とは有意な関連性は認められなかった。 以上より、NET後のKi-67標識率は、リンパ管侵襲、静脈侵襲と有意な関連性を認め、血管新生とも関連することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
NETの効果予測因子を同定するため本研究では血管新生因子との関連性に着目している。NETの効果は、臨床的には腫瘍縮小率で評価され、病理組織学的には組織学的治療効果判定で評価される。現在までの研究において、NET後Ki-67標識率はNET前腫瘍径およびNET後腫瘍縮小の有無、リンパ節転移、さらに血管新生と関連性を有すると推察されるNET後リンパ管侵襲、NET後静脈侵襲との関連性が認められた。腫瘍径、リンパ節転移、リンパ管侵襲、静脈侵襲との関連性は生存期間との関連性も示唆するするものであり、重要な結果と考えられる。 一方、NETによる血管新生の画像的評価(超音波ドプラ法による波形解析を含む)と臨床病理学的因子、血管新生因子との関連性の解析はまだなされておらず、研究の進捗状況としては遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究においては、NETの効果を反映する指標として、NET後Ki-67標識率がキーファクターとしての位置づけを有することが示された。さらに、血管新生との関連においてリンパ管侵襲、静脈侵襲も重要な因子であることが示された。 今後、前向き研究として、画像診断による血管新生関連因子として、超音波ドプラ法による腫瘍内血流波形の変化を検討し、Ki-67標識率との関連性を解析する。 さらに、後ろ向きおよび前向き研究として、血管新生関連因子としてVEGF、PD-ECGF/TP、MMP、CD31/34などの分子発現を、NET前後の腫瘍組織において免疫組織化学染色による蛋白レベル、real-time PCRによるmRNAレベルで解析する。さらに、MMPを標的とするmicroRNA(miR-29c3pなど)の発現を血液および腫瘍組織においてreal-time PCRで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の実施の遅れがあり、予定していた費用を支出できなかったためである。 最終年度に際して、研究を迅速かつ確実に進めることで、予算の執行が可能となる見込みである。
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