研究課題/領域番号 |
18K08587
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
上妻 行則 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (90550145)
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研究分担者 |
二宮 治彦 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10198533) [辞退]
山本 隆敏 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (10746233)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血小板 / 血小板機能 |
研究実績の概要 |
本年度は、抗血小板薬であるclopidogrelを使用状況下においても人工髄液が血小板機能を増強するか否かについて検証を行った。 まず、血小板凝集能による評価を行った。 clopidogrel(fin:2.5μM)存在下でcollagen (fin:2μg/mL)で刺激すると凝集率は26.4%であった。一方、clopidogrel(fin:2.5μM)存在下で人工髄液を添加し、collagen (fin:2μg/mL)で刺激すると凝集率は57.1%となり、血小板凝集能は増強していた。また、clopidogrel(fin:25μM)存在下でcollagenで刺激すると凝集率は17.4%であったのに対して、clopidogrel(fin:25μM)存在下で人工髄液を添加し、collagenで刺激すると凝集率は33.5%であり、人工髄液による血小板凝集能の増強がclopidogrel使用時でも確認された。 次に、flow cytometry を用いて血小板活性化マーカーの測定を行ったclopidogrel(fin:25μM)存在下でcollagen (fin:5μg/mL)で刺激すると活性化GPIIb陽性血小板の割合は2.3%であった。一方、clopidogrel(fin:25μM)存在下で人工髄液を添加し、collagenで刺激すると活性化GPIIb陽性血小板の割合は11.7%となり、増強していた。さらにPS 露出を検証したところ、 clopidogrel(fin:25μM)存在下でcollagenで刺激するとPS陽性血小板の割合は2.1%であったのに対して、clopidogrel(fin:25μM)存在下で人工髄液を添加し、collagenで刺激するとPS陽性血小板の割合は10.2%であり、人工髄液による血小板活性化マーカーの増強がclopidogrel使用時でも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、抗血小板薬であるアスピリン使用時における血小板活性化への人工髄液の影響を検証し、現在論文執筆中である。一方、抗血小板薬は組み合わせて使用されることも多く、本年度はclopidogrelに着目し、検証を行った。アスピリン使用時と同様にclopidogrel添加により抑制された血小板凝集や活性化GPIIb, PS露出などの各種血小板活性化マーカーも人工髄液添加により増強された。また、血小板を保管バックに保存し、製剤と同様の条件で保管すると血小板凝集能は保管に従い低下した。そこで、低下した血小板に人工髄液を添加したところ、血小板凝集は回復傾向を示した。さらに保管血小板上にglycocalicinおよびmicroparticleが増加することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
抗血小板薬の使用は近年増加している。一方、手術時においては出血を伴うため、抗血小板薬の服用を中止した後に行うことが多い。しかし、今回の申請者らの検証では、アスピリンやclopidogrel存在により抑制された血小板機能を人工髄液が増強する可能性を見出した。今後は、臨床への応用を考え、抗血小板薬を投与したマウスもでるにおける人工髄液の影響について出血時間などで検証する予定である。また、clopidogrel単独のみならず、アスピリンとの併用時においても血小板活性化増強作用が人工髄液添加により認められるか否かについても検証を行う予定である。さらには血小板製剤と同様の環境下で保管し、機能が低下した血小板においても人工髄液の添加により機能が回復したため、今後は人工髄液のなかでの重炭酸に着目し、検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究で使用するマウスの見積もりを取り、次年度使用額が0となる予定であったが、現在の新型コロナウイルス流行により見積もりを取ったマスクの入荷が困難となり、450円次年度使用額が生じてしまった。従って、翌年度分として請求させていただいた助成金に450円を加えた助成金を使用し、抗血小板薬存在下における人工髄液、重炭酸の効果について詳細に検証する予定である。
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