研究実績の概要 |
本研究では、人工髄液 (artificial cerebrospinal fluid; aCSF) または aCSF の構成成分である重炭酸ナトリウムが血小板活性化、特に血小板凝集能または血小板からの microparticle (MP) 放出、血小板形態に影響を与えるか検証することを目的とした。platelet rich plasma (PRP) と aCSF または重炭酸ナトリウムを混合した後、血小板凝集能を測定した。生理食塩水 (normal saline, NS) と比較して aCSF 及び重炭酸ナトリウムを混合した PRP では、使用した全てのアゴニストにおいて最大凝集率が上昇したものの、アゴニストの種類により血小板凝集能を増強する重炭酸ナトリウム濃度が異なっていた。次に血小板形態への影響を検討するために平均血小板容積 (MPV) を測定した。様々な濃度の重炭酸ナトリウムを添加した後、MPV を測定したが、NS 添加時と有意な差は認められなかった。また、血小板機能を亢進させる最適な重炭酸ナトリウム濃度を明らかにするために様々な濃度に希釈した重炭酸ナトリウムを PRP と混合した後、血小板凝集能を測定した。その結果及び pH、MPV の結果から変化が少なく、かつ血小板凝集能を増強させた 0.1% 重炭酸ナトリウム濃度が止血薬として使用する場合の至適濃度である可能性が明らかとなった。最後に、血小板からの MP 放出について検証したところ、aCSF, 重炭酸ナトリウム使用時において MP は NS 使用時より有意に増加した。また、aCSF, 重炭酸ナトリウム使用時における MP の増加は、aspirin 添加時においても確認された。以上より、重炭酸ナトリウムの添加は血小板形態に影響を与えることなく、血小板凝集能を亢進させる可能性が明らかとなった。
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