研究課題
あらたなエピゲノムとしてRNAメチル化の癌化における機序が、近年相次いで報告されてきており、RNAメチル化は、翻訳蛋白の機能変化のみならず、非翻訳(non-coding)RNA領域においては、その発現調節に深く関わる可能性が明らかとなってきている。炎症によって引き起こされる潰瘍性大腸炎発癌(dysplasiacarcinoma sequence)において、DNAメチル化はDNA変異より早期の段階で変化を認めるため、早期診断または癌化リスク診断に優れており、RNAメチル化も同様の変化を起こる可能性が考慮される。今回、潰瘍性大腸炎における様々な部位の大腸粘膜におけるRNAメチル化の程度を明らかにし、さらに内視鏡検査にて簡便に評価可能かつ肛門鏡で生検可能な直腸粘膜を用い、そのRNAメチル化のField effect/cancerizationを用いた大腸全体の癌化の状況を判別する概念を確立することはこれまでにない新しいアプローチとなる。また糞便中に混入した癌由来のRNAメチル化、循環血中のcell free RNAメチル化を用いた癌合併潰瘍性大腸炎患者の診断マーカーも期待されている。潰瘍性大腸炎癌化部位に特徴的に認められるRNAメチル化を同定し、それが便中、血清に反映されることが確認できれば診断困難な潰瘍性大腸炎癌化患者を非侵襲的検査法で同定できることが期待され、これにより潰瘍性大腸炎患者の年に一度繰り返し行われる内視鏡検査や生検の負担軽減や癌化見落としによる不幸な予後の回避のみならず、医療費削減にも効果が発揮されうる。本年度は昨年度の同定したMETTL3のin vitroにおける機能解析を行い、oncogeneとして機能していることを明らかにした。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Oncology Letters
巻: 20 ページ: 333
10.3892/ol.2020.12196