研究課題/領域番号 |
18K08593
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
穴澤 貴行 京都大学, 医学研究科, 助教 (90566811)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵島移植 / 免疫抑制 / 細胞移植 / 糖尿病 / 再生医療 |
研究実績の概要 |
異種あるいはES/iPS由来膵島細胞移植の臨床応用のために、門脈内に変わる新たな移植部位の開発が望まれている。現状の免疫抑制療法は膵島毒性と移植後血管新生阻害作用を有しており、膵島移植のブレイクスルーには新たな免疫抑制療法の開発が必要である。MEK阻害剤は、Allo反応性T細胞を選択的に抑制しうること、MEK/ERK経路の阻害は耐糖能を改善しうる可能性があることが報告されている。今年度は、新規移植部位の開発に先立ち、膵島移植モデルにおいて、MEK阻害剤がAllo免疫応答を制御しうるかを検証した。 MEK阻害剤存在下で24時間培養した膵島は、薬剤濃度に関わらずViabilityおよびインスリン分泌能は維持されており、毒性は確認されなかった。マウスの同種膵島(H-2d)をSTZ投与により誘導した糖尿病モデルマウス(H-2b)に経門脈的に移植を行い、MEK阻害剤は移植直前から移植後28日目まで経口投与を行って膵島移植実験を実施した。MEK阻害剤投与群では非投与群よりグラフト生着期間が有意に延長(30日vs.11.5日)し、移植7日後の組織学的評価においてMEK阻害剤投与群では膵島グラフトへのTリンパ球の浸潤抑制が確認された。MEK阻害剤投与群はコントロール群に比べ、アログラフトに対する肝内のEffector CD4+ T cellの増加が抑制され (44.0% vs.58.3%)。Naïve CD4+ T cellが温存されていた(42.2% vs.30.5%)。 今年度の研究により、MEK阻害剤単剤投与で同種移植膵島への拒絶反応抑制が確認され、膵島移植への応用可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究において、最も重要な検討課題であった、経門脈膵島移植におけるMEK阻害剤の有効性を、明確に確認することができ、その機序についても概ね確認することができた。同種膵島移植ならびに、同種細胞移植におけるMEK阻害剤の免疫抑制作用については初めての報告でもあり、他の分野にも波及しうる結果である。今年度の研究の進捗により、次年度以降も当初の計画通り研究が推進できる見通しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は以下の項目について研究を推進する。 ① MEK阻害剤の耐糖能改善効果の確認:MEK阻害剤投与が耐糖能に与える影響について、分離膵島細胞、正常マウス、膵島移植 レシピエントマウスを用いて確認する。MEK阻害剤がERK/Cdk5経路を介しPPARγ機能を 制御することで耐糖能の改善をもたらすことを、Westernblot法等を用いて検証する。 ② 皮下膵島移植モデルにおける血管新生抑制作用の有無の検証:皮下血管誘導法(Am J Transplant. 2014)における血管新生作用を対照 群・CNI 群・MEK 阻害剤群間で組織学的(免疫染色・ 電気顕微鏡等)に比較する。 ③MEK 阻害剤による皮下膵島移植:皮下Allo膵島移植がTrametinibにより生着延長しうるか、 成功した場合には作用機序(T細胞動態、移植部位の免 疫担当細胞・液性因子の解析等)を対照群・CNI群と比 較することで検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも少ない実験動物数で今年度の研究成果が得られたため、次年度使用額が発生した。次年度にはMEK阻害剤の作用機序の解析や、耐糖能に与える影響等のIn vitro, In vivoアッセイを予定しており、それらの実施に必要な実験動物購入費用、試薬類の購入費用等に充てることを計画している。
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