研究課題/領域番号 |
18K08597
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
田原 裕之 広島大学, 病院(医), 助教 (30423354)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗体関連型拒絶反応 |
研究実績の概要 |
当研究の目的は、従来解析困難であったヒト免疫担当細胞の抗体関連型拒絶反応メカニズムをヒト化マウスモデルにより解明することである。 これまでの研究成果により、HLA抗体産生促進シグナルを誘導するヒトCD40リガンドを高発現したマウス繊維芽細胞上でレシピエントおよびドナー末梢血単核球をin vitro混合培養しNSGマウスへ投与したところ、十分量のHLA抗体産生を高率に得られるHLA抗体産生ヒト化マウスの作製が可能になった。 当該年度の研究成果としては、先述のヒトCD40リガンド高発現マウス線維芽細胞にさらに、ヒトBAFFを遺伝子導入し、B細胞活性化シグナルであるヒトBAFF-BAFF受容体シグナルを加え抗体産生促進ヒト化マウスモデルで同様にHLA抗体産生を調べたところ、十分量のHLA抗体産生は得られたが、stimulatorに対する特異的HLA抗体のみが産生されないという結果であった。さらにこのin vitro培養系において、responder PBMCから制御性T細胞を除去し同様に抗体産生モデルを構築したところ、やはりstimulator HLAに対する特異的なHLA抗体のみが産生なれなかった。そこで、in vitro培養系のresponder細胞上に抗体産生抑制シグナルの存在の有無を調べたところ、培養後のresponder接着細胞(おそらくはAPC)上にPDL-1が高発現していることが確認された。そこで、先述のin vitro培養系において、PD-L1 blocking抗体を添加し同様に抗体産生ヒト化マウスモデルを構築したところ、非特異的HLA抗体は十分に産生され、一部のマウスにおいてstimulator HLAに対する特異的HLA抗体の産生が得られた。よって、PD-L1シグナル伝達抑制がDSA産生において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定したドナー特異的HLA抗体産生マウスの作成には至っていないが、HLA抗体産生メカニズムを解明しうるマウスモデルの確立は達成できた。 また、臨床応用へ向けた取り組みとして、患者末梢血を用いたヒト化マウスモデル構築をpreliminary caseとして行ったが、目的の特異的HLA抗体産生は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
特異的HLA抗体産生のみ制御するマウスモデルとしては確立されたので、アロ抗原特異的B細胞トレランスのメカニズムを解明するヒト化マウスモデルとしての有用性は十分期待できる。先述のin vitro培養系において抗原特異的なB細胞トレランスを誘導するシグナルの同定を今後模索していく。さらには、臨床症例において免疫抑制剤フリーとなっているいわゆるオペレーショナルトレランス症例の末梢血を用いて、B細胞性トレランスの機能的解析をヒト化マウスモデルで行う方策を推進したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染蔓延と年度末期が重なり、当該年度内に使用予定であった試薬などの物品費が次年度使用額として計上されたためである。使用額は21,860円であり、投与購入予定であった物品をコロナウイルスによる輸送の影響が解決次第、次年度初期に購入予定である。
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