当研究の目的は、従来解析困難であったヒト免疫担当細胞の抗体関連型拒絶反応メカニズムをヒト化マウスモデルにより解明することである。これまでの研究成果により、HLA抗体産生促進シグナルを誘導するヒトCD40リガンドを高発現したマウス繊維芽細胞上でレシピエントおよびドナー末梢血単核球をin vitro混合培養しNSGマウスへ投与したところ、十分量のHLA抗体産生を高率に得られるHLA抗体産生ヒト化マウスの作製が可能になった。さらに、先述のヒトCD40リガンド高発現マウス線維芽細胞にさらに、ヒトBAFFを遺伝子導入し、B細胞活性化シグナルであるヒトBAFF-BAFF受容体シグナルを加え抗体産生促進ヒト化マウスモデルで同様にHLA抗体産生を調べたところ、十分量のHLA抗体産生は得られたが、stimulatorに対する特異的HLA抗体のみが産生されないという結果であった。また、このin vitro培養系において、responder PBMCから制御性T細胞を除去し同様に抗体産生モデルを構築したところ、やはりstimulator HLAに対する特異的なHLA抗体のみが産生なれなかった。そこで、in vitro培養系のresponder細胞上に抗体産生抑制シグナルの存在の有無を調べたところ、培養後のresponder接着細胞(おそらくはAPC)上にPDL-1が高発現していることが確認された。 当該年度の研究成果としては、先述のin vitro培養系において、PD-L1 blocking抗体を添加し同様に抗体産生ヒト化マウスモデルを構築したところ、非特異的HLA抗体は十分に産生され、一部のマウスにおいてstimulator HLAに対する特異的HLA抗体の産生が得られたことの実証を進めた。このin vitro培養系ではresponder接着細胞(おそらくは樹状細胞)上にPD-L1が強発現していることが確認された。stimulator抗原刺激に伴う抗原特異的な変化を寛容に導くシグナルを抑制することよって、つまりPD-L1シグナル伝達抑制がDSA産生において重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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