研究課題
我々はCE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて、アセトアミノフェンの過剰摂取によって引き起こされる急性肝炎のバイオマーカーの発見や、大腸癌や胃癌組織における網羅的な代謝プロファイルの測定を行ってきた。CE-TOFMSは、解糖系、ペントースリン酸経路、TCA回路に代表される中心炭素代謝や核酸合成、アミノ酸の生合成・分解に関与する代謝物群など、エネルギー代謝に関連する主要な代謝物の大部分であるイオン性物質の測定を得意とする。このため、これらの代謝異常が多く見られる癌の研究や代謝レベルでのバイオマーカー探索に最適な方法であることを実証してきた。また、乳癌患者および健常者の唾液をサンプルとしてCE-TOFMSを基盤としたメタボローム解析により乳癌に特徴的な代謝産物の特定を行った。測定された約500の代謝産物から健常者と比較して乳癌に特徴的な代謝産物の抽出が可能であった。健常者と乳癌患者の間でピークに有意差を認めたのは61物質であり、さらに乳癌患者において健常者の10倍以上濃度の高い spermine、3-methylhistidine、piperdine、trimethylamine n-oxide などを同定した。
3: やや遅れている
症例集積が予定より遅れたため。
症例の集積が完了次第、解析を行い、その結果と各症例の術前化学療法の効果を含む臨床データを比較解析する。測定前にメタボロームは測定方法の最適化を行う。数理モデルにはリンパ転移を高精度に予測できた手法(Sugimoto et al, Int J Biol Markers, 2014)を用いて、お互いに相関する多数の変数も多重共線性を気にせず高精度に予測できる方法を用いる。
理由:Covid-19により、予定をしていた学会旅費や消耗品、物品購入が少なかった。また分担研究者の分担金より一部返金があったため。使用計画:物品購入、謝金、学会年会費の支払い
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Breast cancer research and treatment
巻: 184 ページ: 585-596
10.1007/s10549-020-05869-y