研究課題/領域番号 |
18K08610
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
和田 聡 昭和大学, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (30420102)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん間質細胞 / PDXモデル / 次世代シーケンサー / 膵臓がん |
研究実績の概要 |
これまでに我々は計61系統のがん患者由来のPDXモデルを作製してきており(樹立確立:61/116(52.6%))、膵臓がんPDXにおいては17系統作製してきた(膵臓がんPDX樹立確立:17/38(44.7%))。また、患者由来の膵臓がん組織がNOG-EGFPマウスに継代してもその特徴が保たれている事を形態学的及び遺伝学的に証明してきた。PDXマウスの特徴として、がん細胞もがん間質細胞も元は患者由来であるが、マウス継代を行うことによりがん細胞は患者由来のままであるが、がん間質細胞はマウス由来に置換されていく。この現象を利用してがん間質細胞がマウス由来に置換されていく中で残存する患者由来のがん間質細胞に着目して解析を施行した。具体的には、腫瘍組織を上皮マーカーと間質マーカーとで染色し、間質マーカー陽性細胞をソーティングして次世代シーケンサー(NGS)にて解析した。得られたデータをマウス由来のシーケンスとヒト由来のシーケンスとに完全に分けて解析し、ヒト由来のシーケンスのみデータ解析を施行した。この解析を若い世代のPDX(G2)と多く継代したPDX(G8)とを用いて比較検証した。その発現解析結果から、長期継代したPDXにおいても維持されている遺伝子を同定した。今後は同定した遺伝子について発現及び機能解析を施行する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PDXの作製は順調に進み、PDXの特徴についての解析も予想通りのデータが得られた。腫瘍組織を単細胞化し、上皮マーカーと間質マーカーとで染色して、間質マーカー陽性細胞をソーティングする作業工程ではかなり苦労したが、ある程度は想定範囲内であり最終的には純度の高い細胞をソーティングすることに成功した。ソーティングした細胞からDNA/RNAを抽出し、次世代シーケンサー(NGS)解析に持っていく段階でDNA/RNA量が足りない事態が起こったが、数匹のマウスから同様の工程を踏んで細胞を採取することで規定量のDNA/RNAを採取する事ができた。NGS解析後ヒト由来のシーケンスのみを抽出し、PDXマウスのG2とG8で比較解析を施行した際には、色々な解析法を駆使することにより有望な遺伝子を同定する事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
同定した遺伝子が本当にがん細胞ではなくがん間質細胞由来である事を証明するために、使用したPDX腫瘍組織及び元の患者腫瘍組織を用いて検証を行う。本検証ではDNA/RNA解析だけでなく、タンパク質解析も施行する予定である。また、その他のがん組織における発現もmultiple tissue arrayを用いて解析を行う。機能解析では、同定した遺伝子の発現ベクターを作製し、細胞株に遺伝子導入してin vitro及びin vivoでの解析を施行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 次世代シーケンサー解析を他の研究で行っているサンプル解析と一緒に行うことで委託解析コストを下げる事に成功した。しかし、同定した遺伝子が予想より多いため、今後の発現解析及び機能解析に、より多くの経費が掛かることが予想されたため次年度への使用額が生じた。 (使用計画) 基本的な研究計画に変更はないが、同定された遺伝子が予想より多く、検証する時間とコストに変更が生じ、それに合わせて使用計画も変更する。
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