これまでに我々は、膵臓がんPDXを17系統作製してきた(膵臓がんPDX樹立確立:17/38(44.7%))。また、患者由来の膵臓がん組織がNOG-EGFPマウスに継代してもその特徴が保たれている事を形態学的及び遺伝学的に証明してきた。PDXマウスの特徴として、がん細胞もがん間質細胞も元は患者由来であるが、マウス継代を行うことによりがん細胞は患者由来のままであるが、がん間質細胞はマウス由来に置換されていく。この現象を利用してがん間質細胞がマウス由来に置換されていく中で残存する患者由来のがん間質細胞に着目して解析を施行した。具体的には、腫瘍組織を上皮マーカーと間質マーカーとで染色し、間質マーカー陽性細胞をFACSソーティングして次世代シーケンサー(NGS)にて解析した。得られたデータをマウス由来のシーケンスとヒト由来のシーケンスとに完全に分けて解析し、ヒト由来のシーケンスのみデータ解析を施行した。この解析を若い世代のPDX(G2)と多く継代したPDX(G8)とを用いて比較検証した。その発現解析結果から、長期継代したPDXにおいて発現が高く維持されている遺伝子を同定した。同定した遺伝子が間質細胞に特異的であるかを検証するため、同じPDXモデルのがん細胞における遺伝子発現と比較解析を行った結果、同定した遺伝子Xはがん細胞には全く発現を認めず間質細胞にのみ発現している事が判明した。またその遺伝子X由来の蛋白質発現を同じPDXモデルの腫瘍組織を用いて免疫染色を行った結果、腫瘍の一部の間質細胞にのみ発現を認めた。そこでこの遺伝子を標的としての治療法の開発に着手した。遺伝子X由来の抗原蛋白に対する抗体を作製してCAR分子を構築した。それをT細胞に遺伝子導入してCAR-T細胞を作製した。今後はそれを用いた抗腫瘍効果について検証を行っていく。
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