研究課題/領域番号 |
18K08616
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
牧野 知紀 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80528620)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害剤 / 食道癌 / 腫瘍浸潤T細胞 / 化学療法 |
研究実績の概要 |
本研究では食道癌に対する化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の新規併用療法の治療効果の検証とその治療効果予測マーカーの開発を目的とし、①化療とPD-1の相互作用の検証、②併用療法の臨床効果の検証、③治療効果予測マーカー探索の3本立てでの遂行を計画した。現状の進捗については、 ①食道癌切除例180例の検討で、切除標本の腫瘍PD-L1およびPD-L2発現は各29.4、48.3%にみられ高発現例は予後不良であった。この傾向は術前化療(NAC)例のみにみられ、術前無治療と比較するとNAC後は腫瘍のPD-L1発現率が有意に高く、腫瘍浸潤CD8陽性細胞数はPD-L1陽性例では陰性例より少ない傾向にあった。このように化療で腫瘍PD-L1発現が誘導され化療耐性メカニズムとなる可能性が示唆された。 ②第3相治験例においてNivolumab+化学療法(5FU+CDDP)群に当院でエントリーした13例に関する治療効果および有害事象発生を含めた臨床データは現在追跡中である(治験継続中のため現時点では開示できず)。 ③食道がん免疫微小環境の評価の一つとして、術前無治療163例の切除標本を用いて腫瘍浸潤リンパ球(TIL)評価として腫瘍中心部および辺縁部のそれぞれでCD3、CD8陽性細胞数を測定し総合スコアを算出した。全症例では総合スコア値で予後に有意差は認めなかったが、進行症例(stageII-IV)ではスコアhigh群で有意に予後良好であった。次にNAC100症例の内視鏡生検標本における腫瘍部の免疫染色によるCD3陽性細胞数密度を測定しその中央値で2群化し予後・治療効果との相関をみたところ、CD3 high群がlow群より有意に予後良好であり、多変量解析でもCD3細胞数が独立予後因子となった。また治療効果との相関については、CD3細胞数high群がlow群より組織学的治療効果が高い傾向を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記、研究実績の概要③においてがん免疫微小環境評価のひとつとして腫瘍浸潤リンパ球の評価に予定より多くの時間を要したことが原因として挙げられる。将来的なバイオマーカーとしての確立のため評価法の標準化を目指すべく器械によるリンパ球数の自動カウントを導入したが、この測定法の確立が予想外に困難であったため苦戦した。また主に人員と財源の理由から網羅的アプローチとして計画した腫瘍組織、末梢血の全エクソンシーケンスやmiRNAアレイ解析、遺伝子変異数/neo-antigen数解析については現状では進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
上記のごとく研究の遅延の原因のひとつとして研究に携わる人員の問題もあるが、最終年度は研究チームが1人増員となるので、とくに免疫チェックポイント阻害剤+化学療法を施行した治験症例について臨床データの詳細な解析および腫瘍サンプルを用いた基礎的実験について優先して行う予定である。また民間助成金の応募などで財源が確保でき次第、網羅的アプローチとして計画した上記の腫瘍組織、末梢血の全エクソンシーケンスやmiRNAアレイ解析、遺伝子変異数/neo-antigen数解析についても進める方針である。何らかの結果がでればその時点で企業の承諾を得たうえで海外・国内の論文・学会等に積極的に発信していく。
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