本研究では食道癌に対する化学療法(化療)+免疫チェックポイント阻害薬の新規併用療法の治療効果の検証とその治療効果予測マーカーの開発を目的とし、①化療とPD-1の相互作用の検証、②併用療法の臨床効果の検証、③治療効果・予後予測マーカー探索の3本立てでの遂行を計画した。 ①食道癌切除標本180例では腫瘍PD-L1・L2発現を全体の各29.4、48.3%に認め、それぞれの高発現例は低発現例より予後不良であった。この傾向は術前化療(NAC)例のみにみられ、術前無治療と比較するとNAC後は腫瘍PD-L1発現が有意に高く、腫瘍浸潤CD8陽性細胞数はPD-L1陽性例では陰性例より少ない傾向にあった。これより化療により腫瘍PD-L1発現が誘導され化療耐性メカニズムとなる可能性が示唆された。 ②第3相治験(CheckMate648試験)で進行・再発食道癌に対する1次治療としてのNivolumab+化療群は化療群と比較し有意な生存(全生存期間、無増悪生存期間)の延長が明らかになった(2021年4月9日プレスリリース)。今後当院でのエントリー13例に関する臨床データも開示予定である。 ③術前無治療切除標本163例での腫瘍浸潤リンパ球(TIL)評価として腫瘍中心部、辺縁部のそれぞれでCD3、CD8陽性細胞数を測定し総合スコアを算出した。全症例では総合スコアで予後に差は認めなかったが、進行例(stageII-IV)ではスコアhigh群で有意に予後良好であった。次にNAC100症例の内視鏡生検標本における腫瘍部CD3陽性細胞数密度を測定しその中央値で2群化し予後・治療効果との相関をみたところ、CD3 high群はlow群より有意に予後良好であり、多変量解析でもCD3細胞数が独立予後因子となった。また治療効果との相関については、CD3細胞数high群がlow群より組織学的治療効果が高い傾向を認めた。
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