研究課題
本研究では難治性の膵がん治療成績向上のため、①がん幹細胞関連抗原、②マルチHLA結合性ペプチド、並びに③マルチ抗原をキーワードとした、新しいペプチドワクチン療法の開発を行うことが目的である。さらに平成31年度からは追加・変更の研究課題として、膵がんの遺伝子変異に由来するネオアンチゲンの解析も併せて行った。2年目の平成31年度には、膵がん幹細胞に特徴的に高発現するCathepsin B並びにCalreticulin由来のエピトープペプチドを探索した。その結果、HLA-A*0201, A*0206, A-2402のいずれにも結合能が高いエピトープペプチドが、Cathepsin B由来のものが1種類、Calreticulin由来のものが8種類同定された。肺転移を伴う膵がん患者の原発巣から穿刺吸引法にてがん組織を採取し、全エクソン解析とRNAシークエンスにより遺伝子変異を伴い発現量の高いタンパクをネオアンチゲン候補として38種類同定された。また、化学療法施行後に再びがん組織を解析したところ26種類の候補が挙げられた。このうち、19種類は化学療法前のみで、19種類は化学療法前後で、7種類が化学療法後のみで同定され、ネオアンチゲンを標的とする場合には直近の治療後に標的を再探索する必要があることが示唆された。このうち、特に魅力的な候補を16種類に絞り、エピトープペプチドを探索したところ、我々のシステムを用いれば、18種類のペプチドに候補を絞ることができた。患者末梢血リンパ球を用いてELISPOT assayを行った結果、すべてのペプチドで特異的な免疫誘導が検出された。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた平成31年度の研究計画はほぼ順調に進んでいる。計画通りに進んでいないのはMUC1抗原由来マルチHLA結合性ペプチドを用いた前臨床安全性試験と膵がん幹細胞に特徴的に高発現するCathepsin B並びにCalreticulin由来のエピトープペプチドを用いた免疫誘導試験である。一方、平成30年度の報告書に記載したようにネオアンチゲンの解析を追加で進めることができた。
平成31年度に進めることができなかった項目を令和2年度に行うとともに、令和2年度に予定された計画を進める。一方、がん幹細胞に特徴的に発現するタンパクをターゲットとした治療に加えて、癌遺伝子変異由来のネオアンチゲンをターゲットとした治療研究が注目されているため、両方の方向で研究を進めたいと考えている。
年度末に購入予定であった試薬の納入が翌年度にずれ込んだため。
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