研究課題/領域番号 |
18K08623
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
高森 啓史 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (90363514)
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研究分担者 |
今井 克憲 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 助教 (60555746)
岡部 弘尚 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (40573621)
橋本 大輔 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (80508507) [辞退]
新田 英利 熊本大学, 病院, 非常勤診療医師 (90555749)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 補体C5a / C5a受容体 / 癌間質細胞 / 膵星細胞 / 浸潤 / 転移 |
研究実績の概要 |
膵癌組織の50-80%は間質細胞を含んでおり、癌細胞と間質細胞のinteractionは癌細胞が浸潤・転移するうえで重要な働きを有する。とくに間質のコラーゲン繊維を裏打ちする膵星細胞(PSCs)は膵組織の間質に存在し膵の線維化を促進させる。また活性化PSCsのマーカーであるαSMA高発現症例は有意に予後不良であり、PSCsが膵癌の進展・予後に寄与しているためPSCsは線維化・癌進展の重要な役割を担うKey factorといえる。近年PSCsは補体C5aの受容体であるC5areceptor(C5aR)を発現し、C5aと反応することで活性化し膵の線維化を促進させ、C5aR antagonistにより線維化が軽減することが明らかになった。上記よりC5aRは膵癌の進展を増強させている可能性があるが未だその報告はない。一方でC5aRを抑制することは線維化を抑制するだけでなくPSCsの活性化を介した癌の増殖・浸潤・転移を抑制させることが示唆されるが、未だその報告はなくまた効果も不明である。 本研究の目的は、PSCに着目してこれら間質細胞と膵癌におけるC5a-C5aR機構を介した転移・浸潤メカニズムを解析し、tumor-stromal interactionにおけるC5aRの役割について解析することである。さらに臨床応用を目指しこれらをターゲットとした新たな膵癌治療の効果について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト膵癌組織を用いてC5aR抗体およびαSMA抗体を用いて蛍光二重染色を用いた結果、PSCsがC5aRを発現していることが確認できた。かつ共焦点顕微鏡においてもαSMA陽性PSCsがC5aRを発現していることが確認できた。また臨床病理学的にもC5aR陽性かつαSMA陽性細胞を高率に発現する膵癌症例は低率に発現する症例にくらべ癌の進行度が高く、予後不良であることがわかった。さらにin vitroにおいてPSCs細胞株を用いてRT-PCRおよびWestern blottingを行いC5aRの発現を確認できた。PSCsにC5aを加えた際、αSMAの発現の増加を認めたことからC5aR陽性PSCsにおいてC5aと反応することでactivateされることが示唆された。 現在、C5aRの発現のない膵癌細胞の増殖や浸潤にC5aR陽性PSCsがどのように影響するかをgrowth assay、invasion assayを用いて評価している。C5aで刺激したPSCsと膵癌細胞株を共培養し各assayを行っているが、その浸潤・増殖効果が弱いため、C5a以外にもさまざまな条件下(IL-1、IL-6、TGF-βなど種々のサイトカイン刺激によりPSCsをactivateした状態)での解析を行っているため時間を要している。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroにおいてC5aR陽性PSCsが膵癌細胞の増殖あるいは浸潤能を更新させた場合、in vivoに進む予定である。詳しくは、膵癌発癌モデルマウス(LSLKras G12D/+; LSL-Trp53R172H/+; Pdx-1-Cre; KPCマウス)をPMX-53投与群、非投与群に振り分け、腫瘍径を3D超音波にて計測する。さらに膵外転移の有無、生存を観察する。またジェムザールに対する上乗せ効果についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)医局内保管の試薬、消耗品を使用することができたため。 (使用計画)試薬、消耗品の購入費に充てたいと考える。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
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