研究課題
わが国において大腸癌患者は増加しており、それに伴い大腸癌に対する腹腔鏡手術症例も増加している。本研究は、直腸手術における骨盤内神経の同定を確実にすることで同手術において頻度の高い合併症である神経損傷を予防し手術成績向上を視野に入れ、腹腔鏡下術中自律神経同定法を開発し、臨床応用を目指す。これまでに手術にて切除されたヒト大腸切除標本を用いて、神経細胞に特異的な抗S100抗体を用いた組織免疫染色を行い、腸管神経系を構成している腸管壁内の神経叢の可視化に成功した。腸管壁内に存在している神経ネットワークの構造を明らかにするため、結合組織の消化処理および薄切標本作成技術を駆使して、腸管壁内神経叢を露出させることに成功した。さらに、走査型電子顕微鏡(SEM)による組織形態の確認を行い、神経細胞に特異的に発現しているS100蛋白を標的とした免疫組織化学染色によって、ex vivoにおいて腸管壁内神経細胞叢の可視化に成功した。一方で、蛍光標識を必要としない方法論を検討してきた結果、腸管の外側、もしくは内側からレーザー光を照射し、ラマン散乱光などの光イメージング技術を駆使して、非侵襲的に腸管壁内の神経叢の可視化に成功した。直腸手術における骨盤内神経の可視化を最終目標とする本研究において、腸管の蠕動運動を司る自律神経を形態学的側面、細胞生物学的側面の両方から同定できた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
日本小児外科学会雑誌
巻: 56 ページ: 600-600