研究課題
食道癌組織における容積感受性チャネル蛋白LRRC8Aの発現レベルを解析したところ。LRRC8A高発現群では低発現群に比べ有意に予後不良であった。次に、種々の食道癌細胞株からLRRC8A発現の高いTE15、KYSE170に対してLRRC8A siRNAを導入したところ、細胞増殖能、遊走・浸潤能が低下しアポトーシスが惹起された。Microarray解析では食道扁平上皮癌細胞株に対するLRRC8Aのノックダウンにより、G1/S checkpoint regulationに関与するp21やp27、E2F7や細胞接着に関与するMMPやIntegrinなどを含む多くの遺伝子発現を促進/抑制していた。これらの研究成果は英文論文にまとめて発表した(Am J Pathol. 2019)。また、上部消化管癌細胞株にLRRC8A siRNAをトランスフェクションし、低浸透圧刺激に対する反応性の解析を行った。LRRC8Aのノックダウンにより、調節性容積減少(RVD)が抑制され、低浸透圧による殺細胞効果が増強されることが確認された。更に、上部消化管癌細胞株を用い、温度変化がLRRC8AやAQP5の発現変化を介してRVDを制御する細胞容積調節機構を解明した。これらの研究成果は英文論文にまとめて発表した(Int J Oncol. 2019)。現在、胃癌におけるLRRC8Aの発現機能解析、マウス播種転移モデルを用いたin vivoにおけるLRRC8A発現レベルによる低浸透圧細胞破壊療の反応性変化の解析を進めている。一方で、食道癌・胃癌におけるANO9 (Ann Surg Oncol. 2020)、TRPV2 (Sci Rep. 2019)、Sodium iodide symporter (Gastric Cancer. 2019)などのイオン輸送体の発現機能解析・臨床病理学的意義を解明した。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち、ヒト食道癌組織における容積感受性チャネル蛋白LRRC8Aの発現解析、癌細胞におけるLRRC8Aを介する細胞周期・アポトーシス・細胞浸潤制御機構の解明、上部消化管癌細胞株の温度刺激によるLRRC8A 発現変化・低浸透圧刺激に対する反応性の解析などの基礎実験は、ほぼ終了している。また、上部消化管癌における種々のイオン輸送体・pH制御因子の機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、胃癌組織におけるLRRC8A発現意義の検証と、胃癌細胞株を用いた細胞周期・ アポトーシス・細胞浸潤制御機構の解析、マウス播種転移モデルを用いたLRRC8A 発現レベルによる低浸透圧細胞破壊療の反応性解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
次年度以降は、食道癌解析で得られたLRRC8Aの予後因子としての意義、細胞機能制御機構の存在を他の消化器癌においても検証するため、胃癌組織におけるLRRC8A発現解析、胃癌細胞株を用いた細胞周期・ アポトーシス・細胞浸潤制御機構解析を行う。LRRC8A siRNAをトランスフェクションした胃癌細胞株の遺伝子発現変化をMicroarrayで網羅的に解析する。更に、上部消化管癌のマウス胸膜・腹膜播種転移モデルを用い、in vivoにおけるLRRC8A 発現レベルによる低浸透圧細胞破壊療法反応性、温度が及ばす影響について検討する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件)
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巻: ー ページ: ー
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