研究課題
2022年度は、予防抗菌薬としてcefmetazole(CMZ)を投与した腹腔鏡下結腸切除術、腹腔鏡下直腸切除術を施行した105例を対象に、更なる解析を行った。手術部位感染(SSI)群と非SSI群について、各項目の関連性を単変量解析を用いて調査した。有意因子(P<0.1)は、CMZ追加投与、年齢、クレアチニンクリアランス、閉創時の皮下脂肪組織であったため、多変量解析を実施したところ、年齢(77歳以上)が有意であった(オッズ比5.53、95%CI 1.28~23.88、P=0.02)。高齢は、SSIの発生に寄与したと考えられる。全体として、血清、皮下脂肪組織、腸間膜脂肪組織におけるCMZ濃度は、単回投与の血清濃度(以下中央値):皮膚切開時101.3、腸管切除時38.4、皮膚閉鎖時31.0 mg/L、単回投与の組織濃度:4.2、1.6、1.4 mg/g、3時間後追加投与の血清濃度:82.0、31.5、68.8 mg/L、追加投与の組織濃度:3.5、1.7、2.9 mg/gであった。SSIの主な原因菌の中から、meticillin-susceptible S. aureus (MSSA)、Escherichia coli、Bacteroides fragilisについて、文献に基づき、MIC90(90%の菌株の発育を阻止したminimum inhibitory concentration)を各々1、16、64 mg/L と設定すると、多くの症例で皮膚切開時のCMZ血清濃度はMIC90を上回っていた。CMZの蛋白結合率は85%と報告されているが、特に皮膚常在菌であるMSSAは、蛋白結合率を考慮しても十分な濃度を維持しており,SSIの抑制に寄与したと考えられる。また、閉創時の低いCMZ皮下組織濃度は、SSI発生に関与する可能性があることが示された。
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Journal of Infection and Chemotherapy
巻: 28 ページ: 1105-1111
10.1016/j.jiac.2022.03.024.