研究課題
薬剤耐性菌の世界的蔓延はこれまでの過剰な抗菌薬使用が原因であることに異論はない.急性胆道炎の起因菌として検出頻度の高い腸内細菌においても,薬剤耐性菌の検出頻度は増加傾向にある.例えば,急性胆道炎の起因菌として高率に検出されるEscherichia coliやKlebsiella spp.においても,近年では高率にextended spectrum β-lactamase (ESBL)産生菌が検出される.これらの細菌は抗菌薬治療で汎用されるセファロスポリン系,ペニシリン系,フルオロキノロン系抗菌薬の効果が期待できない.世界的に見ても多剤耐性菌の検出頻度も増加しており,今後これらの耐性菌がさらに増加することが予想される.また,国内においては徐々に進んでいる高齢化に伴い,薬剤耐性菌が高率に検出される医療関連感染の増加も危惧される.これまでわれわれは急性胆道炎症例にメタゲノム解析を行い,24時間以内に従来の細菌検査と一致した結果を網羅的に得られることを確認したが,ESBL産生菌の同定にはさらに24時間を要した.従来の細菌検査法よりは短期間で細菌同定・耐性状況を確認できるメタゲノム解析であるが,このタイムロスは容易に敗血症に陥る可能性のある一刻を争う急性胆道炎においては致命的となる可能性がある.よって,メタゲノム解析よりも,さらに一層迅速に起因菌を同定し,かつその耐性状況を判別するための技術確立に向けた基礎的研究の遂行は急務と考えられた.今回立案した基礎研究は自動多項目同時遺伝子検査システムを用いた細菌同定システムの解析である.108例の症例集積を行い,解析後,本年度,Surgery Todayに投稿し,掲載が決定した.
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Surgery Today
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