研究課題/領域番号 |
18K08636
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
星川 真有美 東京大学, 医学部附属病院, 登録研究員 (30761564)
|
研究分担者 |
野呂 拓史 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 助教 (10385346)
山本 順司 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 教授 (40342654)
青笹 季文 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 外科学, 准教授 (40649034)
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 免疫・微生物学, 准教授 (70531391)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | LPSトレランス / 肝臓 / 腫瘍 |
研究実績の概要 |
BALB/cマウスを用いて、LPS 5µg/kgを3日間連続で腹腔内投与し、LPSトレランスを誘導した。大腸癌株Colon 26を門脈内投与することにより大腸癌肝転移モデルを作成し、生存期間を観察した。Colon 26にNano-lanternという高輝度発光蛋白質を安定発現させ、IVIS imaging systemを用いて経時的に腫瘍の増大を観察した。LPSトレランスを誘導したマウスの肝及び脾単核球を採取し、フローサイトメトリーで免疫担当細胞の分画をみるとともにPerforin/Granzymeの発現を検討した。また肝脾単核球のColon 26に対する細胞傷害活性をテラスキャンで測定した。トレランス群では対照群と比較して肝転移の増大が顕著に抑制されており、生存期間が有意に延長した。肝単核球をフローサイトメトリーで解析したところ、トレランス群ではNK細胞及びNKT細胞が増加しており、ともにPerforin、Granzyme Bの発現が亢進していた。通常であればNK細胞、NKT細胞の活性化を促す働きを持つIFN-γの産生は、トレランス群で亢進していなかった。また、トレランス群は肝単核球のColon 26に対する細胞傷害活性が有意に亢進していた。脾臓の単核球では、これらの変化は肝単核球ほど顕著には見られなかった。LPSトレランスを誘導したマウスでは、肝のNK細胞及びNKT細胞が活性化し、Perforin/Granzyme系が活性化することで抗腫瘍活性を亢進させていることを明らかにした。LPSトレランスにおいて、NK細胞、NKT細胞の活性化には、IFN-γなどの炎症性サイトカインによるシグナルとは異なる経路の関与が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で下記の結果を得ているため。 LPSトレランスを誘導したマウスは、肝での腫瘍の発育、進展が抑制され、生存期間が延長した。LPSトレランスマウスは肝のNK細胞、NKT細胞が増加していた。LPSトレランスマウスの肝NK細胞、NKT細胞ではPerforin / Granzyme系の発現が亢進していた。LPSトレランスマウスでは肝のNK細胞、NKT細胞が活性化しているにもかかわらず、Interferom-γの発現が亢進していなかった。LPSトレランスマウスの肝単核球の抗腫瘍活性が増強していた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の展望として、腫瘍の全身転移モデルにおける抗腫瘍活性の検討、担癌感染モデルにおける手術侵襲軽減効果、感染抵抗性増強効果の検討、より安全にLPSトレランスを誘導する方法についての検討が必要と考える。これらの課題を解決できれば、LPSトレランスは周術期管理に極めて有用な手段となる可能性がある。 LPSトレランス誘導マウスの肝臓では、NK細胞及びNKT細胞が活性化し、抗腫瘍活性が亢進しており、術前にトレランスが誘導できれば、手術侵襲の軽減、感染性合併症の予防、さらに新規転移形成を抑制できる可能性があり、周術期管理への応用が期待される。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度は予定より使用経費が少なかったため。引き続き次年度に、研究遂行に必要な経費を使用予定としている。
|