研究課題/領域番号 |
18K08644
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊神 剛 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院講師 (50420378)
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研究分担者 |
梛野 正人 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (20237564)
江畑 智希 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (60362258)
國料 俊男 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (60378023)
山口 淳平 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (00566987)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | リアルタイムナビゲーションシステム |
研究実績の概要 |
リアルタイムナビゲーションシステムの安全な運用には、術中の空間的な位置関係に関する内的表象であるメンタルモデルの構築が重要である。このメンタルモデルの構築は、現状を把握する事実確認と今後の行動を予想するプラン確認によって行われる。手術では術野において腫瘍や解剖学的構造物の位置、長さ、大きさに関する事実確認と肝切除ラインと温存する解剖学的構造物に関するプラン確認が行われている。しかし、どのようにメンタルモデルが構築されるかについては、十分に明らかにされていない。 腹腔鏡下肝切除手術のリアルタイムナビゲーション5症例の観察と会話の記録を行い、認知科学的解析として発話分析を行った。バーチャル画像使用前後の一連の言語行為を会話、会話中の一つの言い切り、身体動作をセグメントと定義し、67会話、1384エグメントについて発話分析を行った。発話者:執刀医889 (64%)、第一助手400 (29%)、発話対象:腹腔鏡画像546 (39%)、バーチャル画像481 (35%)、発話内容:事実確認411 (30%)、プラン確認408 (29%)であった。発話者としては執刀医が多く2/3を占めていたが、残り1/3は第一助手に認められ、発話者と第一助手の間に双方向的に共通認識が発語により形成されていることが明らかになった。発話対象としてバーチャル画像に関するものを35%認め、腹腔鏡画像の39%とほぼ同様であり、バーチャル画像がメンタルモデルの構築に大きく寄与しており、ナビゲーション手術では、従来行われることのない新たな会話が発生していることが明らかになった。また会話内容としてプラン確認と事実確認がほぼ同率であり、ナビゲーション手術においてメンタルモデルの構築にはプラン確認と事実確認が重要であり、メンタルモデルの精緻化に寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
認知科学的解析として発話分析を行ない、術中の空間的な位置関係に関する内的表象であるメンタルモデルの構築にプラン確認と事実確認が重要であることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
術前のシミュレーション画像を腹腔鏡の動作にリンクさせてカーナビゲーションシステムの如くモニター表示する、磁気式位置センサーを用いたリアルタイムナビゲーションシステムの開発を継続する。腹腔鏡の操作性(可動域、視野の範囲など)、耐久性などその有効性を明らかにする。物理的変位に対する補正システムとして、モデル肝臓を用いて呼吸、心拍に対する補正システム、さらに手術時の体位変換、手術操作による肝の授動に対しても可能な補正システムを開発する。腹腔鏡画像への仮想肝臓画像の重畳表示により切離予定部位を認識できるシステムを開発する。これらのシステムに関して仮想肝臓での肝切離線、切離面などが実際のヒト切除肝臓との比較検討により有効性を明らかにする。 ナビゲーション手術では、従来行われることのない新たな会話が発生しており、術中の空間的な位置関係に関する内的表象であるメンタルモデルの構築に関して、認知科学的解析として新たな会話の発話分析を継続する。事実確認として腫瘍や解剖学的構造物の位置、長さ、大きさの確認に関して、バーチャル画像および腹腔鏡画像における鉗子による確認および視覚による確認のどちらが優先されているかについて検討する。またプラン確認として肝切除ラインと温存する解剖学的構造物に関してバーチャル画像および腹腔鏡画像における解剖学的構造物および肝切除ラインについてどのように検討されているかを明らかにする。認知科学的解析によりナビゲーション手術では事実確認とプラン確認が行われることにより、術者と助手の間に共通したメンタルモデルが形成され、メンタルモデルの精緻化が促進されていることを明らかにし、メンタルモデルの精緻化の機序を解明する。
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