研究課題
大腸癌の化学療法に起因する肝障害で、肝転移に対する集学的治療において問題となるsinusoidal obstruction syndrome(SOS)では、これまでにヒトSOSの病態と全く同一と考えられる動物モデルは存在しなかった。我々は、まずヒトに遺伝・解剖的に最も近いブタを用いてオキサリプラチン誘導性SOSモデルを確立し、SOSの病態と発症のメカニズムを明らかにするとともに、そのバイオマーカーを同定することを目的としてきた。雄性12か月のマイクロミニブタを使用し、ヒトで大腸癌に対して用いられている化学療法レジメンFOLFOX療法(oxaliplatin + 5-FU + Leucovorin)を2週間ごとに施行した。観察期間は24週で、FOLFOXの投与前後に血液検査を行い、血中白金濃度及びAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値を 測定。0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行い、肝障害の評価を行った。対照群としてFOLFOXに代えて生理食塩水の投与と開腹肝生検を行ったsham群を作成した。FOLFOX投与群の病理組織所見にてSOSに特異的な類洞の拡張や肝細胞索の狭小化を確認、電子顕微鏡所見でも血管内皮細胞の脱落や類洞内の出血を認め、SOSと診断した。これまでFOLFOX群は5頭作成しており、全てで同様の所見を認め、再現性を確認した。sham群では血液検査・病理所見とも著変なく経過しており、対照群としての成立も確認した(第119回日本外科学会定期学術集会およびDDW 2019 Lecture Presentationで報告)。次年度は予防効果が報告されてい る薬剤によって SOSが予防できるのかどうかを経時的な肝生検で確認し、各々の薬剤の至適投与量や至適投与期間を同定して実臨床での使用に迅速に結び付ける予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度である今年は、ヒトに遺伝・解剖的に最も近いブタを用いてオキサリプラチン誘導性SOSモデルを確立することを目標としてきた。雄性12か月のマイクロミニブタを使用し、ヒトで大腸癌に対して用いられている化学療法レジメンFOLFOX療法(oxaliplatin + 5-FU + Leucovorin)を2週間ごとに施行した。観察期間は24週で、FOLFOXの投与前後に血液検査を行い、血中白金濃度及びAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値を 測定。0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行い、肝障害の評価を行った。対照群としてFOLFOXに代えて生理食塩水の投与と開腹肝生検を行ったsham群を作成した。FOLFOX投与群の病理組織所見にてSOSに特異的な類洞の拡張や肝細胞索の狭小化を確認、電子顕微鏡所見でも血管内皮細胞の脱落や類洞内の出血を認め、SOSと診断した。これまでFOLFOX群は5頭作成しており、全てで同様の所見を認め、再現性を確認した。sham群では血液検査・病理所見とも著変なく経過しており、対照群としての成立も確認した。これにより、まずSOSミニブタモデルは確立したと考えている。
今後は予防効果が報告されている薬剤(大建中湯、オルプリノン、ベバシズマブ)によって SOSが予防できるのかどうかを経時的な肝生検で確認し、各々の薬剤の至適投与量や至適投与期間を同定して、実臨床でのSOS予防目的の使用に迅速に結び付ける予定である。
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