研究課題/領域番号 |
18K08645
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬尾 智 京都大学, 医学研究科, 助教 (70646546)
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研究分担者 |
上本 伸二 京都大学, 医学研究科, 教授 (40252449)
鶴山 竜昭 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (00303842)
川口 博明 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60325777)
田浦 康二朗 京都大学, 医学研究科, 准教授 (80378629)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸癌肝転移 / SOS / FOLFOX療法 |
研究実績の概要 |
大腸癌の化学療法に起因する肝障害で、肝転移に対する集学的治療において問題となるsinusoidal obstruction syndrome(SOS)では、これまでにヒトSOSの病態と全く同一と考えられる動物モデルは存在しなかった。そこでまず我々は、ヒトSOSの主な原因と考えられているoxaliplatinを、ヒトに遺伝・解剖的に最も近いブタに対して継続的に投与することでSOSモデルを確立し、SOSの病態把握と発症メカニズムの解明を目指した。 雄性12か月のマイクロミニブタを使用し、ヒトで大腸癌に対して用いられている化学療法レジメンのFOLFOX療法(oxaliplatin + 5-FU + Leucovorin)を2週間ごとに施行した。観察期間は24週で、FOLFOXの投与前後に血液検査を行い、血中の白金濃度及びAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値・AT-Ⅲ・D-dymerを測定。0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行い、肝障害の評価を行った。対照群としてFOLFOXに代えて生理食塩水の投与と開腹肝生検を行ったsham群を作成した。 FOLFOX群の病理組織所見にてSOSに特異的な類洞の拡張や肝細胞索の狭小化を確認し、電子顕微鏡所見でも血管内皮細胞の脱落や類洞内の出血を認め、SOSと診断した。これまでFOLFOX群は5頭作成しており、全てで同様の所見を認め、再現性を確認した。sham群では血液検査・病理所見とも著変なく経過しており、対照群としての成立も確認した(以上はDDW 2019 Lecture Presentationで報告済み)。 本年度は予防効果が報告されている薬剤のうち、まず大建中湯によって SOSが予防できるのかどうかを経時的な肝生検で確認するために、至適投与量や至適投与期間の同定を目指した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次年度である本年は、初年度に確立したFOLFOX誘導性SOSモデルに対して、SOSの予防効果が報告されている薬剤のうち、まずは大建中湯の投与を行った。 雄性12か月のマイクロミニブタを使用し、朝夕の餌に大建中湯を混入させる方法を用いた。大建中湯には生姜の成分が含まれているが、マイクロミニブタは甘口の食事を好むため、刺激性の強い漢方薬のままでの定期的な摂食は困難であった。そのため、製造段階で生姜の成分のみを抜いた粉末を作成し、通常の餌に振りかけて混ぜ込むことに成功した。現在、大建中湯をFOLFOX療法に併用投与中のモデルを作成中であり、2週間ごとのFOLFOXの投与前後に血液検査を行い、血中の白金濃度及びAST・ALT・T-Bil・Hb・血小板値・AT-Ⅲ・D-dymerを測定。0・4・8・12・18・24週に開腹肝生検を行い、肝障害の評価を行っている。観察期間は24週で、FOLFOXに代えて生理食塩水の投与と開腹肝生検を行ったsham群およびFOLFOX投与群との比較を行い、予防効果を確認していく予定である。最終的には、大建中湯併用モデルとしては2-3頭での検証を予定している。 このように薬剤の安定投与法の確立に時間を要した為やや遅れていると判定した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大建中湯にて予防効果が確認できれば、他の薬剤(オルプリノン、ベバシズマブ)に移行し、マイクロミニブタを用いたFOLFOX誘導性SOSモデルにおいてSOSが予防できるのかどうかを経時的な肝生検で確認し、各々の薬剤の至適投与量や至適投与期間を同定して、実臨床でのSOS予防目的の使用に迅速に結び付けていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
SOS予防効果を実証する候補薬剤として今年度中に大建中湯、オルプリノン、ベバシズマブの3剤を使用する予定であったが、実験動物であるマイクロミニブタに大建中湯を内服させる方法の確立に想定以上の時間がかかり、今年度は大建中湯を用いた実験しか行うことが出来なかった。結果として予定していた支出額を使用することは出来なかった。 今年度は遅れを取り戻すべく他の2剤(オルプリノン、ベバシズマブ)を用いた実験に移行し、各々の薬剤の至適投与量や至適投与期間を同定して実臨床でのSOS予防目的の使用に迅速に結び付けていく予定である。
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