研究実績の概要 |
大腸がんは遺伝的背景(と環境要因と)が結腸・直腸局所に影響を及ぼしゲノムレベルの変異を来しそれが蓄積して生じる三位一体の病態であると考えられている。したがって遺伝子多型で決まる遺伝学的背景が、発がん時のみならず病変切除後の経過においても患者の再発予後に影響を及ぼしうることについて明らかにすることを目的とした。 平成30年度は以下の如く研究を推進し成果を得た。 大腸がん(再発)8例と 非再発10例の原発巣について、ゲノムDNA (WES)およびtotal RNA抽出(RNA SeqおよびTCR repatoires)を実施した。再発陽性大腸がん症例は非再発大腸がんに比べてSNV数が少なく、また推察される抗原性を比較したところ後者において高い抗原性を示した。またコピー数変異(CNA)は有意に再発原発巣>非再発原発巣 (p< 2.2e-16)であった。この結果を検証するためにTCGAデータで大腸がん(409例)におけるCNAとSNV数を比較したところ、全ゲノム領域では有意差は認めなかったが、染色体7番、20番、13番に限ると、アームレベルのCNAとSNVとは逆相関をしており、aneuploidyになると検出されるSNVが減少することを明らかにして、自験例を支持していた。また、アームレベルCNAと腫瘍免疫応答を評価する指標として知られる(cytolytic activity; CYT)とが逆相関することを示しており(Rooney et al. Cell 2015)、コピー数の増加により腫瘍免疫応答が低下することを明らかにした。さらにR+群はR-群にくらべて、腫瘍免疫応答関連分子群(CD8, CD4, PD1, PDL1, CTLA4, FOXP3, CD25, CCR4)の発現が低下していることを明らかにした。
|