研究実績の概要 |
保有する膵癌細胞株8株でYAP/TAZの発現状態をwestern blotting法で確認したところ、肝癌細胞株同様にTAZ優位(TAZ>YAP)の発現パターンを8株中7株で呈していた。AsPC-1細胞株ではYAP=TAZ程度の発現状態であった。Smad4の発現についてもwestern blotting法で確認したところ、Smad4発現あり(MIAPaca2, PANC-1, PK59, PK8)とSmad4発現なし(AsPC-1, KLM-1, S2-VP10, S2-013)の株があり、以降の実験にはAsPC-1, KLM-1, MIAPaca2, PANC-1, PK59を用いることとした。まずは、YAP/TAZのノックダウン、ノックイン実験を行い、Smad signalの変化を確認したが、定常状態におけるYAP/TAZの発現変化は、Smad signalの変化に対して影響を与えなかった。そこで、TGF-β添加条件でのYAP/TAZのノックダウン、ノックイン実験を行ったところ、YAP/TAZのノックイン条件下ではTGF-β刺激によるSmad3のリン酸化が促進されることを同定し、さらにE-cadherinの低下が促進されることを突き止めた。すなわちYAP/TAZの高発現膵癌細胞株に腫瘍環境からのTGF-β刺激がEMTを促進している可能性が示唆された。
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