研究課題/領域番号 |
18K08653
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
村山 康利 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50578979)
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研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / リンパ節転移 / 切除断端 / 蛍光診断 |
研究実績の概要 |
胃癌との確定診断を受けた術前患者を検索対象とし、術前に5-ALA20mg/kgを内服し、通常の切除術を施行。切除標本に対して蛍光観察を行った。以前に報告した通り、リンパ濾胞へのPpIXの集積が問題となった。形態的に診断することは可能であるが、客観的に診断するために差分法。ratio法で診断した。まず、差分法である。これは、リンパ節から得られた組織の蛍光スペクトルを作成し、PpⅨがpeakを持つ635nm付近において、強い自家蛍光を持つコラーゲンなどのsignalを差し引くことで、PpIX特異的のsignalを算出する方法である。次にratio法である。これは、PpⅨは光照射を続けると光酸化作用によりPPpに変換され、蛍光ピークが675nmにシフトする。この光酸化作用を検出し、PpⅨ蛍光の局在を特異的にとらえることができる方法である。 64人の胃癌患者から323リンパ節を取り出し、観察した。その結果、差分法は感度78.0%、特異度96.8%、正診率94.4%であった。また、ratio法では感度78.0%、特異度96.1%、正診率93.8%であった。AUCは差分法0.921、ratio法0.909であった。リンパ濾胞を加味した従来の蛍光診断法と同等以上の結果が得られた。 胃癌・大腸癌・膵癌細胞株にGGTプローブを噴霧すると、経時的に蛍光を呈することが分かった。しかし、細胞株によってその蛍光強度に違いが認められた。 胃癌、大腸癌の臨床検体を用いて癌部・非癌部をライセート化し、GGT活性を測定した。胃癌は96症例、大腸癌は119例について検討した。胃癌では癌部で有意にGGT活性が高い事(p<0.001)が分かった。同様に大腸癌でも癌部で有意に高値であった。(p<0.001)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は前年に施行した事追加報告ならびに臨床検体を用いた結果の報告であった。従来の主観に頼ってPpIXの蓄積したリンパ濾胞を形態的に判断し、診断するのは観察者により、診断能が異なる可能性があるが、差分法とratio法での診断は客観的な診断が可能になることを示した。また、その精度は蛍光診断に精通した研究者が観察する以上の結果であった。 GGTプローブについては、胃癌・大腸癌の臨床検体から取り出した、癌部・非癌部の組織をライセート化することでGGT活性について検討した。そのGGT活性は胃癌・大腸癌とも有意に癌部でGGT活性が高値であることが分かった。しかし、いずれもまだ症例数が少ない膵癌での結果については、今後症例を蓄積して検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度は概ね予定通りに遂行できた。5-ALAを用いたリンパ節転移・断端診断について膵癌でも引き続き検討する。GGT活性についても、膵癌の臨床検体で測定し、蛍光診断に応用可能かについて検討していく。
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