研究課題/領域番号 |
18K08655
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
川井 学 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40398459)
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研究分担者 |
北畑 裕司 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (00535338)
山上 裕機 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (20191190)
岡田 健一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50407988)
廣野 誠子 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60468288)
宮澤 基樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (90549734)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵頭部領域癌 / 術前運動療法 / アディポネクチン / サイトカイン |
研究実績の概要 |
高難度手術である膵頭十二指腸切除(pancreaticoduodenectomy:PD)は手術侵襲が大きく術後合併症率は30~50%と高率であり、年齢は術後在院死の危険因子である。このため、わが国の高齢者人口の増加に伴い、膵頭部領域癌に対してPDを行う後期高齢者(75歳以上)に対する術後合併症対策は喫緊の課題である。我々は、2003年から2014年においてPDを576例施行したが、周術期管理として2009年以降、術前運動療法を介入させた。そして術前運動療法介入前後での呼吸器合併症など術後合併症を比較解析した結果、介入前後で呼吸器合併症が4.3%から0.9%に有意に減少した(P=0.011)。さらに術後平均在院日数に関しては24日から16日まで短縮することができた(P<0.001)。術前運動療法がPD術後呼吸器合併症を減少させることを証明した(Kitahata Y, Hirono S, Kawai M, et al. Intensive perioperative rehabilitation improves surgical outcomes after pancreaticoduodenectomy. Langenbecks Arch Surg. 2018;403:711-718. )。しかし、運動療法が過量になると炎症や酸化ストレスが逆に増加することも報告されており,画一的な運動療法には十分な注意を要する。このため、膵頭部領域癌をもつ後期高齢者に対するPD術後合併症減少のためには、PD術後合併症高危険群を予測する新規バイオマ-カ-を同定し、運動療法の個別化をはかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PDにおける術前運動療法によるアディポネクチンおよびサイトカイン動態変化から術後合併症に及ぼす影響の分子生物学的機序解明と、それらのバイオマーカーと術後合併症の関連性から、術後合併症高危険群を予測する新規バイオマーカーを探索することを目的としている。手術侵襲・術後炎症程度の指標として現在まで報告されているサイトカインはIL-1β,IL-2, IL-4, IL-6, IL-8, TNFα, INFγなど多種にわたる。このため、術後感染性合併症の診断に有効なサイトカイン決定のためには、同時に複数サイトカインを定量的に測定する必要がある。現在、10検体のアディポネクチンおよびサイトカインの測定を行ったが、研究期間に同意の得られた膵頭十二指腸切除術50例の血中アディポネクチンおよびサイトカインの測定を予定しているため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
研究は膵頭部領域癌を対象として膵頭十二指腸切除術を施行予定の後期高齢者で、研究期間に同意の得られた50例を予定登録症例としている。2019年度では2018年度に引き続き膵頭十二指腸切除術を施行した症例において血中アディポネクチンの動態変化およびIL-1α,IL-1β, IL-4, IL-6, IL-8, IL-10, IL-13, TNFα, INFγのサイトカインを網羅的に測定した結果を解析する。術前運動療法前後の①血中アディポネクチンの動態変化、②血中サイトカインの動態変化の解析。それらのバイオマ-カ-の変化と術後合併症の有無の比較から、サイトカイン・アディポネクチンによる術後合併症高危険群を予測する新規バイオマ-カ-の確立することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は術前運動療法前後の血清中サイトカインおよびアディポネクチン測定を主に行う予定である。測定は試薬の使用の関係で10検体毎にまとまって測定する必要がある。このため、本年度の検体の測定が次年度にまとめて測定する必要があるため、本年度分を翌年年度分として請求いたします。
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