研究課題/領域番号 |
18K08658
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
田代 良彦 昭和大学, 医学部, 講師 (20636245)
|
研究分担者 |
古泉 友丈 昭和大学, 医学部, 講師 (00384412)
榎並 延太 昭和大学, 医学部, 准教授 (20334394)
青木 武士 昭和大学, 医学部, 教授 (30317515)
村上 雅彦 昭和大学, 医学部, 特任教授 (70255727)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 虚血再灌流障害 / 炎症性サイトカイン / 線維素溶解系因子 / MMP-9 / Plasmin |
研究実績の概要 |
肝臓における虚血再灌流障害は、肝切除術、肝移植、出血性ショックなど、臨床上多くの場面で遭遇し、肝不全へ至ることも決して少なくない。虚血再灌流障害の発症には、炎症性細胞による様々な炎症性サイトカイン分泌が関与している。線維素溶解系(線溶系)は、炎症性サイトカイン分泌に関わっているが、虚血再灌流障害においては、その病態制御機構は明らかになっていないのが現状である。これまで、C57BL/6miceを用いて、麻酔後に肝十二指腸間膜をvesselclipで5分 間クランプする虚血再灌流マウスモデルを作成し実験を行なった。線溶系に関しては、プラスミン生成の指標となるplasmin-a2 plasmin inhibitor complete(PAP)の血中濃度を測定したところ、虚血再灌流マウスモデルでは明らかに上昇しており、線溶系の亢進を確認した。さらに線溶系に制御され、その下流にあるmatrixmetalloproteinase(MMP)が活性化されていることを確認した。このMMPの活性化によって制御されている炎症性サイトカインであるTumor NecrosisFactor-α(TNF-α)やInterloikin-6(IL-6)といった炎症性サイトカインの上昇も併せて確認できた。令和5年度は、MMPやPlasminogenの各種ノックアウ トマウスの使用と新規プラスミン阻害剤の投与による再灌流障害の病態制御機構についてさらなる解明を行なっていく予定であったが、実際の実験には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,虚血再灌流モデルマウスを作製することから始まり、それらに対して線維素溶解系(線溶系)因子群を制御することで、炎症性サイトカインおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素の活性化調節を行い、最終的には虚血再灌流に対する新規治療法の開発までを目的としている。実際の研究としては、サイトカイン分泌、タンパク分解酵素の活性機構の上流にある線溶系因子に着目している。その病態解明のため、Plasminogen(Plg),MMP- 9遺伝子欠損マウス(Plg-/-,MMP-9-/-)及びその野生型マウス(Plg+/+,MMP-9+/+,Wild)を購入、または作成して、再灌流モデルマウスを作成予定である。そして、C57BL6/Jマウスの虚血再灌流モデルマウスを用いて,新規プラスミン阻害剤投与の投与を行い、溶媒(PBS)投与群と比較して、その効果判定を行う予定である。現在、各種遺伝子欠損マウスの搬入と、新規プラスミン阻害剤の入手に難渋しており、入手手段を検討をしている
|
今後の研究の推進方策 |
虚血再灌流モデルに対する新規プラスミン阻害剤(YO-2)の投与と各種遺伝子欠損マウスでのモデルマウス作成を行い、病態制御機構の解明を行う予定である。ただし、これらの入手や搬入が困難である場合には、阻害剤に関しては別の薬剤を代用することも検討する。申請者は、以前に線溶系因子であるPlasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の阻害剤を使用し、PAI-1が炎症性細胞浸潤動態に強く関わっていることを明らかにしており(Honjo K, Tashiro Y FASEB J. 2017)、PAI-1阻害剤による再灌流障害の制御機構を解明することも可能である。また、新規薬剤ではないが、実際にすでに臨床現場で用いられている抗プラスミン剤であるトラネキサム酸を使用することも可能である。計画に遅延が生じているため、各種検査項目の測定は外部委託できる部分は委託することも検討している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定通りに実験が行えなかった。1年延長を行い、これまで施行できなかった実験を行い論文投稿、学会参加を積極的に行う予定である。
|