研究課題/領域番号 |
18K08660
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
内山 和久 大阪医科大学, 医学部, 教授 (80232867)
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研究分担者 |
赤尾 幸博 岐阜大学, 大学院連合創薬医療情報研究科, 特任教授 (00222505)
谷口 高平 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70779686)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | microRNA / 核酸医薬 / microRNA-143 / microRNA-145 / 乳癌 / 大腸癌 / ドラッグデリバリー / ペプチドキャリア |
研究実績の概要 |
研究協力者、和田により開発されたペプチドキャリアにmiRNAを搭載し、miRNAの細胞導入に成功した。RNAの分解回避能は既存のリポソーム製剤と同程度であった。大腸癌細胞株にmiR-145-5pを導入し検討を進めた。miR-145-5pの代表的標的遺伝子であるFSCN1の発現抑制はリポソームキャリアに非劣性であった。アポトーシス、EMT抑制、MAPK経路抑制など幅広い癌増殖抑制能が確認された。これらの知見をまとめ論文として成果を発信した。 また、当初計画していた高転移乳癌モデルに対する検討を行うために、高転移乳癌細胞株のサブタイプ分類を昨年度からより明確にする実験を行った。この実験ではER、PR、HER2陽性細胞を各々入手しmRNA、タンパク発現の比較検討を行い、トリプルネガティブ乳癌であることが示唆された。昨年度の結果から、同細胞はmiR-145-5pを補充療法として導入する適切な細胞であることが示唆された。そこで、研究分担者の開発した合成miR-145-5pを用いた細胞実験を進めている。 更に合成miR-143-3pを導入する動物モデルの作製に着手した。当初、最も抗癌効果が期待された合成miR-143-3pはマウス由来の細胞に対する抗癌効果が低く、高転移性乳癌以外の対象疾患を選定し、研究を進める必要性が出た。そこで、これまで合成miR-143-3pの抗癌効果が実証されている大腸癌に着目した。大腸癌では周辺他臓器の合併切除を余儀なくされ臨床上問題となる骨盤内再発に焦点をあて、動物モデルの作製実験に着手した。膣、肛門、坐骨棘からなる三角部に細胞を移植することで骨盤内に細胞が生着することを同定した。このモデルの特徴を生存率、動物実験用CTなどの画像解析、移植腫瘍片の免疫組織染色から解析した結果を論文化し発信した。 以上から本研究に用いる合成miRNAと標的疾患の選定が終了したため、細胞実験、動物実験へと研究を進める計画である。またより細胞導入効果の高いDDSを用いて検証を行う計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画していた、合成miR-143-3pの高転移性乳癌細胞株に対する効果が思わしくなく、miRNAの選定を再考する必要があった。また合成miR-143-3pが効果不良であった原因について調査する実験を現在、並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
合成miR-145-5pに関しては高転移性乳癌細胞株での細胞実験を中心に進める。オリジナルのmiR-145-5pと標的遺伝子の抑制能に差異がないかを検討し、適切な濃度設定を行い、導入実験を実施する。広範な機序による細胞増殖抑制能が見い出されると予想されるため、特に浸潤転移能に着目し抗癌効果を検証する。 合成miR‐143-3pに関しては開発した大腸癌骨盤内再発モデルに対する動物実験を中心に遂行する。既存のリポソームと比較するためのDDSを選定していく。 また、新たなDDSの開発情報が得られれば、細胞実験などを積極的に進めていく計画である。さらに、合成miR-143-3pが高転移性乳癌細胞株に効果不良であった原因を分子生物学的に解析する実験を進める。この細胞はマウス由来であり動物種の差異に着目しており、現在数種の癌細胞株のヒト由来、マウス由来細胞株で検証を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
想定結果と実験結果に差異が生じたため一部の実験を変更し遂行したため。次年度、動物実験などに使用する計画である。
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備考 |
適宜、更新を予定している。
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