研究課題/領域番号 |
18K08677
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増井 俊彦 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20452352)
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研究分担者 |
長井 和之 京都大学, 医学研究科, 特定病院助教 (30567871)
上本 伸二 滋賀医科大学, 医学研究科, 学長 (40252449)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 内外分泌連関 / CCL5 / 膵発生 |
研究実績の概要 |
我々は胎生期臓器形成において、膵臓で内分泌細胞と外分泌細胞がほぼ同時に発生することから、何らかのクロストークの存在することが想定され、胎児期においてその因子の一つがTFF2であることを見いだしてきた。本研究では成体膵における外分泌組織と内分泌組織の関連性に着目し、マウス成体PDX1強制発現モデルにおいて外分泌組織からの何らかの生理的活性因子が内分泌細胞に影響することを示したことから、その因子の同定、正常組織での受容体発現、PDX1ノックアウトマウスとの関連、さらに胎児膵での意義の有無を検討する計画である。 前年度までにその因子の同定としてCCL5であること、その受容体はGPR75が候補の一つであることを示すことができた。また、CCL5により、単離した成体膵内分泌細胞の増殖が見られることを示してきた。すなわち、人為的マウスモデルで同定された本因子が、成体正常膵においても内分泌細胞の増殖活性があることが明らかとなった。さらに、胎児膵での発現パターンと発現意義についての解析を進めたところ、CCL5は胎児膵においてはE16.5に蛋白発現がはじまり、主に外分泌組織中心における発現が認められることが分かった。 本年度は、マウス胎児膵におけるCCL5発現解析をさらに詳細に検討し、RNA/蛋白レベルではe14.5まで殆ど検出されず、e15.5より外分泌細胞に発現が認めらることを明らかにした。その後、腺房細胞の発生が進むに従って、ほぼ全ての腺房細胞に発現するようになったが、内分泌細胞には検討したP1まで発現を認めないことが明らかになり、発生期においては外分泌組織特異的に発現していることが明らかとなった。また、外分泌でPdx1をKOした胎児膵腺房細胞では、CCL5発現が著明に低下していることが判明した。CCL5を添加することで内分泌細胞の増殖がrescueされることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究で予定していた二つの研究課題について、研究1である、成体膵内分泌組織の生理的維持における内分泌-外分泌組織連関メカニズムの解明については、予定通りの成果を上げ、現在論文作成に向けた投稿を準備中である。さらに、胎児膵における外分泌細胞におけるPdx1ノックアウトマウスにおいて、CCL5を添加することで内分泌細胞の増殖がrescueされることを見いだし、胎児膵において膵外分泌細胞からのCCL5が内分泌細胞増殖を促すことを明確に示すことができ、外内分泌連関の存在を明らかにする成果を上げた。一方、研究2である、糖尿病における細胞非自律的制御機構の解明と新規治療薬としての基礎的検討は本年度の課題で有り、未達であることから、総合的にはやや遅れていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、一年延長した最終年度として、外分泌細胞からのCCL5の発現が内分泌細胞の増殖を促すことを明らかにしたことを受けて、1)胎児膵内分泌細胞のおけるCCL5 receptor 発現 (GPR75発現)の詳細な検討を行うとともに、2)Pdx1 cKOのe16.5 ex vivo cultureにてCCL5とGPR75 antagonistを用いて、rescueされた増殖はCCL5-GPR75 axisのものであったかどうかを検討することで、胎児期におけるCCL5-GPR75 axisの評価を行い、研究1を完成させる。本年度の成果としてCCL5-GPR75の連携は明らかに示されており、さらに詳細に調べることになるため解析に問題は無い。余力を用いて研究2である糖尿病との関連を調べることとし、今後の研究シーズの開発に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
膵外分泌細胞からのCCL5発現を確認した後、マウス胎児膵におけるCCL5の発現時期と発現パターンの解析を進めたが、緊急事態宣言等によりマウス胎児膵の入手が遅れ、そこに費やす目的であった助成金使用が遅れた。さらに、同様の事情でPDX1ノックアウトマウスの入手が遅れたため、同部分の助成金使用が遅延した。今後の使用計画としては、研究1での胎児膵での発現の意義解明のために、PDX1ノックアウトマウスモデルでの発現の解析と胎児期におけるCCL5-GPR75 axisの存在を明確に示す研究にマウスおよびリコンビナントCCL5等の購入のため、50万円を使用する。さらに今回の研究の論文化とともに、糖尿病マウスの作成、CCL5の発現の解析のために残余の40万円を用いる予定である。
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