胎生期臓器形成において、内分泌細胞と外分泌細胞はほぼ同時に発生することから、両者の間には何らかのクロストークがあると考えられてきたが、長らくその証明には至ってない。前年までに、クロストークを担う新規因子を更に探索しケモカインCCL5を候補因子として見出した外分泌由来の因子CCL5は成体内分泌細胞(β細胞)の増殖を制御できる因子であることが検証している。本年は補助期間を延長し、膵外分泌由来のCCL5が胎生期内分泌細胞の増殖を制御しているか検証を行った。胎生16日の野生型マウスから膵臓を摘出し、CCL5 signalを阻害すると、β細胞の増殖が低下した。また、先のCCL5発現パターン解析から、CCL5は外分泌細胞のPdx1と発現パターンが似通っていたため、CCL5の発現はPdx1の制御を受けると予想した。それに一致して、胎生期外分泌細胞特異的Pdx1ノックアウトではCCL5発現が著名に低下していた。我々の先行研究のPdx1のloss of function実験で、Pdx1 ノックアウトにより外分泌由来因子TFF2が発現減弱し、β細胞がアポトーシスを起こすことを示したが、一方でβ細胞の増殖が低下した理由は未解明であった。胎生16日の外分泌細胞特異的Pdx1ノックアウト膵臓にCCL5を添加して培養するとβ細胞の増殖が野生型と同等まで回復し、さらにCCL5 受容体(GPR75)阻害剤も追加で添加するとそのrescue効果は減弱した。つまり外分泌由来のCCL5はβ細胞のGPR75受容体を通してβ細胞増殖を促進していることが示唆された。
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