研究課題/領域番号 |
18K08678
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 秀和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (10528508)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸癌治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
LC-MS/MS解析の結果、全長型Lgr5に共役する分子としてsyntenin-1を同定した。syntenin-1の高発現が予後不良因子となる大腸癌においての報告はない。そのためsyntenin-1発現の臨床病理学的因子および予後との関連を検証し、その機能解析を行った。2006年から2009年までに当科で根治手術を施行した連続する139例の大腸癌症例を対象とし、切除標本におけるsyntenin-1の発現を免疫組織染色により2群に分類した。また3種類のmicrosatellite stable (MSS) 大腸癌細胞株に、syntenin-1に対するshRNAを導入し増殖能・遊走能・抗癌剤感受性アッセイを行った。臨床病理学的因子での比較においては高発現群で分化度 (p=0.001) の他に有意な因子を認めなかった。5年全生存率 (overall survival: OS) は低発現群:高発現群=97.8%:63.8%(p=0.001)、5年無再発生存率 (relapse free survival: RFS) は低発現群:高発現群=92.4%:61.7% (p=0.001) で、syntenin-1高発現群で有意に再発率が高く生存率が低かった。多変量解析ではOSにおいてはCA19-9値と並んでの(p<0.0001)、RFSにおいては脈管侵襲と並んでの (p<0.0001) 予後予測因子であった。さらに、L-OHPに対する感受性は有意差に上昇した(p<0.05)。大腸癌においてsyntenin-1の高発現はOS・RFSの悪化に関与し、予後予測に有用なマーカーとなりうることが示唆された。また、syntenin-1は遊走能と進行再発大腸癌治療におけるkey drugであるL-OHPに対する薬剤感受性に関与していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はin vitro解析から得られた候補分子を臨床検体を用いて評価を行うことで、新しい治療標的としてsyntenin-1を見出した。今後はそのDruggabilityを評価することを目的として、in silico解析、を行う。 また新たに、標的分子の増減をin cellで解析するための新しいスクリーニング系を立ち上げている。今後は、今回得られた標的に対する小分子化合物のスクリーニングを行うことで創薬へ繋げてゆくフェーズにあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、上記「現在までの進捗状況」の理由の項で記したスクリーニング系を用いて、小分子化合物を絞り込む。絞り込んだ化合物の評価系とカウンターアッセイを立ち上げることが今後の課題と考える。細胞株を用いて実験動物に対してXenograft、さらに臨床検体を用いたPatient Derived Xenograft (PDX) モデルを作成し、治療効果ならびにside effectを評価する。同時に引き続き現在までに得られた網羅的解析のデータに対して、文献検索などを含めた調査を並行し、さらなる治療標的を同定してゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該研究で本年度に行う研究事業が来年度にも行うため、助成金を翌年度分とした
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