研究課題
臨床大腸癌検体を用いたタンパク分析の結果、全長型Lgr5に共役する分子として、syntenin-1を同定した。130例の大腸癌切除検体の免疫染色を行った結果、syntenin-1は単独で5年全生存率は低発現群:高発現群=97.8%:63.8%(p=0.001)、5年無再発生存率は低発現群:高発現群=92.4%:61.7% (p=0.001) で、syntenin-1高発現群で有意に再発率が高く生存率が低かった。大腸癌細胞株sw480を用いshRNAを用いて検討したところ、L-OHPに対する感受性は有意差に上昇した (p<0.05)。そこでこのメカニズムを解明するため、RNAseqを行った。IPA解析にてPGE2シグナルに強い影響があることが示唆された。PGE2シグナルは抗炎症作用に強く関与する。既にCOX-2阻害薬であるセレコキシブが臨床で消炎鎮痛剤として使用できる。大腸癌細胞株sw480, CaCO2において、同薬剤とL-OHPの相乗効果を認め、これは三次元培養においても同様の結果であった。Lgr5がsyntenin-1を介してPGE2シグナルを活性化し、化学療法耐性に寄与している可能性が示唆されたものである。本研究の成果はBritish Journal of Cancer誌に投稿し、アクセプトされた。Lgr5の関連分子であるDCLK1についても同様に解析を並行して進めてきた。shDCLK1を細胞株に導入し、下流のシグナルを解析したところ上皮間葉転換に非常に重要な役割を果たしていることが示唆され、また、臨床検体を用いた免疫染色の結果から強力なバイオマーカーである可能性が示唆された。本成果はCarcinogenesis誌にアクセプトされた。
2: おおむね順調に進展している
Lgr5を直接標的とすることは現時点では困難であるが、大腸癌においてバイオマーカー並びに治療標的となりうる複数のシグナル経路と標的分子を同定し得ている。
標的分子の蛋白そのものの増減を細胞内で解析するための新しいスクリーニング系を立ち上げている。今後は、今回得られた標的に対する小分子化合物のスク リーニングを行うことで創薬へ繋げてゆくフェーズにあると考えている。また本方法を用いてp53を標的とする創薬を先行して行なっている。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Carcinogenesis
巻: 14:41(3) ページ: 394-396
10.1093/carcin/bgz157
British Journal of Cancer
巻: ー ページ: ー