研究課題/領域番号 |
18K08679
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
香川 俊輔 岡山大学, 大学病院, 准教授 (00362971)
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研究分担者 |
吉田 龍一 岡山大学, 大学病院, 助教 (80534768)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 胃癌 / 癌微小環境 / マクロファージ / IL-6 / 細胞外小胞体 |
研究実績の概要 |
1.胃癌患者の腹腔内微小環境の分析のため研究同意が得られた胃癌患者から採取した腹腔洗浄液の細胞成分を回収し、癌細胞標識に加え各種抗体等を用い細胞免疫染色を施行し、Flow cytometryによって細胞成分解析を行ったところ、胃癌が播種している腹腔内にはM2マクロファージの割合が高いことが確認された。実験用マクロファージとして末梢血単核球、単球細胞株からマクロファージを分化誘導する手法を確立した。M2マクロファージの胃癌細胞に及ぼす影響の解析したところ、共培養によって胃癌細胞の遊走能、浸潤能が亢進した。化学療法感受性への影響に関しては、化学療法に対しより抵抗性を示す傾向がみられたが、有意差はなかった。上記のマクロファージの胃癌への作用に介在する媒体を解明するため、マクロファージと胃癌細胞の培養上清中の作用伝達物質の探索を行った。共培養上清をarrayを用いてを探索したところ、癌細胞共培養上清中にIL-6が有意に高い濃度で検出された。腹腔洗浄液中でもIL-6を解析したところ、腹膜播種を有する症例で有意にIL-6濃度が高いことが確認された。IL-6あるいは抗IL-6中和抗体を用いた動物実験ではIL-6の投与でマウスでの胃癌腹膜播種の増大が促進され、一方、抗IL-6抗体で腹膜播種が抑制される傾向が観察された。 2.胃癌細胞培養上清、並びに臨床での腹腔洗浄液検体からの細胞外小胞体(EVs)の抽出を行った。EVsマーカーのCD9、CD63 、CD81の蛋白発現分析、及び粒子径分析器による抽出粒子径を分析したところ、胃癌細胞培養上清、腹腔洗浄液からEVsでは特異的マーカーの発現が確認され、粒子径も100nm程度のEVsが採取されていることが確認された。癌細胞由来のEVsをPKH26蛍光色素でマーキングした上で、マクロファージに添加すると、マクロファージに取り込まれることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、腹腔内の微小環境におけるマクロファージの役割がある程度明らかにできた。胃癌細胞株での実験でも臨床検体を用いた実験でも同様の結果が得られ、実験データの再現性も確認できている。IL-6という重要な因子も見つかった。EVsの採取、分析も可能な実験手技が整備でき、胃癌とマクロファージに介在する媒体としてのEVsの役割を分析する基盤も確立できた。
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今後の研究の推進方策 |
腹腔内の癌微小環境のさらなる分析を進める。癌細胞とマクロファージとの相互作用を媒介する因子としてEVsの作用の分析を進める。具体的には癌細胞からのEVsがマクロファージの分化にどのように関与しているかを、種々の状態に分化させた単球、マクロファージに癌細胞由来のEVsを作用させ、マクロファージの分化状態の変化を詳細に調査する。腹腔内癌微小環境におけるIL-6の関与に関しても、より多くの臨床検体で解析を進め、その臨床病理学的因子との関係を探る。
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