研究課題
日本でも2000年前後から各種がんに対するペプチドワクチン療法が行われてきたものの、いまだ必要十分な効果が得られているとはいい難い。一方、免疫チェックポイント阻害剤を用いた新たな免疫療法は、近年その成果が報告されている。免疫療法においては、癌種別の治療開発よりもむしろ、例えば固形癌のMSI high 症例に対するヒト化抗ヒトPD-1モノクローナル抗体のように、症例ごとに個別化した開発が主となっている。そこで、我々も固形癌(食道癌、胃癌、大腸癌、肝癌、膵癌、乳癌)に対する新規アジュバント2種類を組み合わせた次世代のペプチドワクチン療法を開発した。つまり、LAG3-IgとPoly-ICLCという2つのアジュバントを用いた新規ペプチドワクチン療法第I相試験を施行した。我々は旧来のIFAをアジュバントとして用いてきたペプチドワクチン療法の検体と新規アジュバント2種類を組み合わせた次世代のペプチドワクチン療法の検体を比較・検討することで、癌局所微小環境における負の免疫応答を制御し、効果の増強を図るバイオマーカーの解析に重点を置く。新規がんペプチドワクチンを現在までに固形癌17例(食道癌、胃癌、大腸癌、肝細胞癌、膵癌、乳癌)に投与した第1相試験はすでに終了しており、さらに第2相試験として新規の肝細胞癌症例に投与中である。従来のIFAをアジュバントとして用いてきたペプチドワクチン療法と比較し、PD-1, TIM-3, Tregなど各種の分子やElispot assay, TCRレパトア解析を行い、固形癌患者における負の免疫病態を解明し、免疫チェックポイント阻害剤との併用も視野に入れて、がん局所微小環境における負の免疫応答の制御を行うことにより、新しいがんペプチドワクチンの開発に繋げていく。
2: おおむね順調に進展している
17人の患者が用量制限毒性なしでこのワクチン接種療法を受けた。 すべての治療関連の有害事象はグレード2以下でした。HSP70およびGPC3タンパク質によるペプチド特異的CTL誘導は、HLAタイプに関係なく、それぞれ11(64.7%)および13(76.5%)の症例で観察された。 血清腫瘍マーカーレベルは10例(58.8%)で減少した。 PBMCを使用した免疫学的分析は、用量レベル3を受けた患者が、1コースの治療後にT細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有3(TIM3)を発現するCD4 + T細胞を有意に減少させたことを示した。 PD-1またはTIM3を発現するCD4 + T細胞と免疫グロブリンおよびTIM免疫受容体を有するT細胞免疫受容体(TIGIT)を発現するCD8 + T細胞は、PBMCでワクチン接種前に生存のための負の予測因子だった。
現在進行中の肝細胞癌に対する周術期ワクチン療法の第2層試験においても、同様の解析を施行しバイオマーカーを探索するとともに、次のフェーズとしての免疫チェックポイント阻害剤との併用を念頭に置いた臨床試験に繋げていく。
来年度に計画予定の実験が有るため、無理に全額使用せず次年度に持ち越した。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件)
Cancer Immunology, Immunotherapy
巻: 5 ページ: 5-10
10.1007/s00262-020-02518-7.
Journal of immunotherapy
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