研究実績の概要 |
胃癌の特殊型である肝様腺癌は血清AFPの上昇を伴い、通常の胃癌と比較して高率に脈管侵襲や肝転移を起こし、薬剤への抵抗性を示す予後不良の疾患である。その報告は年々増加する一方、生物学的特性については不明な点が多く、研究に有用なツールも不十分である。研究代表者は十二指腸乳頭部を由来とする新規肝様腺癌細胞株の樹立に成功しており、これを用いて浸潤、転移に関わる因子を同定し、有効な治療戦略を確立することが本研究の目的である。通常の培養法で得られたmRNAからcDNAを作製し、RT-PCR法で肝様腺癌細胞株ではAFP, GPC3が高発現していることがわかった。更に、生体内での環境を再現することで、本腫瘍の真の性質に迫ることが出来ると考えられたため、三次元構造を構築できるコラーゲンゲルを用いた三次元培養法で細胞塊の作成を試みた。当研究室で樹立した肝様腺癌細胞株VAT-39に加え、既に樹立されたFU97、GCIY細胞株でも三次元培養を行い,良好な細胞塊を得られた。この細胞塊を光顕、電顕で形態学的解析を行った。また肝様腺癌は肝転移を起こし、それが予後不良の一因となることが判明している。しかし、現時点で肝様腺癌細胞株から肝転移を起こす手法は構築されていない。そこで三次元培養法を用いて、周囲間質との境界が不明瞭なものを選択しサブクローニングを行うことで転移能を有する細胞株が得られるのではないか、という予測を立てた。この推測に基づき、境界不明瞭な細胞塊をサブクローニングし再培養する、という手法を10回連続して繰り返した。この得られた細胞株をヌードマウスに移植し、元の細胞株を比較することで転移に関係する因子を絞り込めると考えている。
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