研究課題
令和1年度は、ヒト胃癌細胞株MKN74を蛍光標識したCD44で処理し、CD44高発現細胞をsorting後、sphere形成能を有する細胞のみを分離し、癌幹細胞を培養。MKN74由来癌幹細胞株が親株に比して、CDDPに対する耐性を有することを確認。MKN74由来癌幹細胞株と親株での遺伝子発現をmicroarrayを用いた網羅的解析により比較検討したところ種々の電位依存性カルシウムチャネルが癌幹細胞において高発現していることを確認した。このうち特にCACNA2D1、CACNB4の発現上昇に着目し研究を進めた。RT-PCRでCACNA2D1、CACNB4のmRNAレベルがMKN74由来癌幹細胞株で著明に上昇していることを確認。CACNA2D1の阻害薬であるAmlodipine、CACNB4の阻害薬であるVerapamilをMKN74由来癌幹細胞株と親株に各々投与すると、癌幹細胞株においてより強い増殖抑制効果が確認された。また、MKN74をAmlodipine、Verapamilで処理すると、CD44のmRNAレベルが低下することをRT-PCRで確認した。Amlodipine、Verapamilは不整脈や高血圧に対し臨床で用いられている薬剤であり、現在その癌幹細胞抑制効果をin vivoで検証している。一方で、消化器癌におけるANO9 (Ann Surg Oncol. 2020)、LRRC8A (Am J Pathol. 2019)、TRPV2 (Sci Rep. 2019)、Sodium iodide symporter (Gastric Cancer. 2019)などのイオン輸送体の発現機能解析・臨床病理学的意義を検証するとともに、低浸透圧刺激後の温度・イオン輸送体・水輸送体を介する細胞容積調節機構を解明した(Int J Oncol. 2019)。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画のうち、ヒト胃癌細胞株を用いた癌幹細胞の作製と、癌幹細胞特異的に発現するイオン輸送体の同定、その阻害剤による癌幹細胞抑制効果を検証する基礎実験は、ほぼ終了している。また、消化器癌における種々のイオン輸送体の発現・機能解析も進展しており、研究成果は既に国内外の学会で発表し、英文雑誌にも投稿・掲載されている。現在、胃癌幹細胞株において高発現するCACNA2D1、CACNB4などの電位依存性カルシウムチャネルに対する阻害薬、Amlodipine、Verapamilの抗癌幹細胞効果をin vivo実験系で検証している。また、胃癌幹細胞株において高発現する他のイオン輸送体に対する阻害薬を選択し、癌幹細胞特異的な増殖抑制効果の解析も進行しており、研究目的・研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
次年度以降は、ターゲットとして選択した種々のイオン輸送体阻害剤の、癌幹細胞特異的な増殖抑制効果をさらに検証するとともに、癌幹細胞内イオン濃度変化を介する細胞周期・アポトーシス制御機構の解明を試みる。また、ヒト胃癌組織における癌幹細胞マーカーの発現解析と、イオン輸送体発現との相関性を解析する。更に、in vivoにおける、阻害剤を用いたイオン輸送体制御による皮下腫瘍成長抑制効果について検証するとともに、各条件の皮下腫瘍から癌幹細胞を抽出し、self-renewal capacityを解析する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (12件)
Ann Surg Oncol.
巻: ー ページ: ー
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