研究課題/領域番号 |
18K08690
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
小松 周平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (40578978)
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研究分担者 |
大辻 英吾 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20244600)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 核酸治療 / microRNA / リキッドバイオプシー / バイオマーカー / 抗がん剤感受性 / エキソソーム / 遊離核酸 |
研究実績の概要 |
網羅的データベース解析またはアレイ解析により、血中濃度による癌の悪性度や抗癌剤感受性診断が可能な分泌型の癌抑制microRNA候補を同定した。さらには分泌型の癌抑制型microRNAを用いた血液・体液を介した抗腫瘍効果や抗癌剤感受性回復効果を目的とした新たな癌核酸治療への応用の可能性をin vivoモデルを作成し世界に先駆けて検証した。これまで、膵癌でmiR-107の有用性(Scientific Reports 2017)と胃癌でmiR-101の有用性(Oncotarget 2017)として英文誌に報告した。本年度は、食道癌でmiR-655の有用性(Molecular Cancer 2019)を報告した。さらに胃癌、肝癌、膵癌の新たな治療感受性予測、核酸治療法の開発を進めている。 解析を進めている内容は以下である。
1.癌患者血中で著しく濃度低下のみられる癌抑制型のmiRNA候補群のmicroRNAアレイを用いた網羅的探索 2.候補miRNA群のtest scale 及び多数症例でvalidation studyによる悪性度、予後への関与の評価 3.細胞株での過剰発現により腫瘍増殖・遊走・浸潤抑制効果の極めて強いmiRNA候補の絞り込み 4.癌抑制型miRNAを高濃度に血中・体液中で維持することによる抗腫瘍効果を目的とした癌治療への応用 5.癌の術前または術後化学療法の抗癌剤耐性患者血中で著しく濃度低下のみられるmiRNA候補群の網羅的探索 6.候補miRNA群のtest scale 及び多数症例でvalidation studyによる抗癌剤感受性への関与の評価 7.候補miRNAを高濃度に血中・体液で維持することによる抗癌剤感受性回復を目的とした癌治療への応用 8.尿中miRNAによる癌診断、悪性度・予後診断、抗腫瘍効果・抗癌剤感受性回復効果診断の可否の評価
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの解析技術を基盤に、本年度は食道癌のリンパ節転移を予測する血中の分泌型の癌抑制型miR-655を同定した。リンパ系進展が高度な食道癌の血中ではmiR-655が枯渇していた。また、血中miR-655の濃度低下は、リンパ節転移の独立した危険因子、さらに患者の独立した予後因子であった。In vivoモデルでの解析では、miR-655の皮下投与による血中濃度の回復は、食道癌リンパ節転移モデルにおいて有意にリンパ節転移を抑えた。本解析結果は本年にMolecular Cancerに報告した。今後臨床応用に向けて準備をすすめている。また、現在は胃癌の抗がん剤治療の耐性予測血中miRを網羅的な解析により同定ししており、今後リキッドバイオプシーへの応用を視野に詳細な解析をすすめる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究手法を基盤に胃癌はじめ様々な消化器癌患者血中で枯渇している癌抑制型miRNAに注目し、鋭敏な悪性度、治療感受性診断を可能とする候補を網羅的に探索する。更にこれらのmicroRNAを用いて体液を介した強力な抗腫瘍効果、抗癌剤感受性回復効果の実現可能とする新たな抗がん核酸治療法の構築を目指す。
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